用語のファジーさが引き起こすトラブル

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猛暑がようやく終わって喜んでいる南です。暑いのは苦手で夏なんてなくなってしまえばいいとさえ思っています。

前回、デニム生地とは何かということと、業界のファジーさについて書きましたが今回はその続きになります。

繊維・ファッション業界は、用語に対してすごくファジーであいまいな使い方をよくします。そのため、他社同士でその用語が意味することが異なり、結果的にとんでもないトラブルを引き起こすことがあります。

デニムと見た目がよく似た素材にダンガリーとシャンブレーがあります。

おさらいです。

〇デニムとは、経糸に色糸、緯糸に白い糸を使って経糸3本に緯糸1本の割合で織られた綾織です。

じゃあダンガリーとは何かというと、

経糸に白い糸、緯糸に色糸を使って織られた綾織のことになります。要するにデニムと経緯が逆になった生地ということになります。

通常、デニムはシャツに使う薄手からズボンに使う厚手までありますが、ダンガリーは主にシャツ用の薄手しかありません。理論的にはズボン用の厚手生地があっても良いと思うのですが、なぜか慣例的にほとんどありません。不思議なことです。

ダンガリーの見た目はほぼデニムと変わりません。よほど生地に詳しい人でない限り、見ただけで区別できないと思います。もちろん、ぼくもできません。

一方、シャンブレーは経糸か緯糸どちらかが色糸でどちらかが白い糸。これで平織にした生地のことです。ですからシャンブレーシャツは色がちょっとボヤっとするのです。経糸と緯糸が一本ずつ交差しますから、どちらかの白い糸が半分表面に見えていることになるので、色がボヤけます。

主にシャツ、薄手ジャケット、ワンピースなどに使われます。

これが一般的な業界を通じたそれぞれの生地の定義だと思います。しかし、これとは異なる定義でそれぞれの生地を呼ぶ人も業界には少なからずいます。デニムの定義がファジーな場合はほとんどないのですが、ダンガリーとシャンブレーの定義はファジーである場合が少なくありません。

ダンガリーのことをシャンブレーと呼ぶ人やブランドも少なくありませんし、その逆もあります。

自社内や自店内だけでならそれでも何の支障もありませんが、他社やメディアと話すときに生地の定義がファジーなままだととんでもないトラブルが起きることがあります。

例えば製造する場合です。

生地屋や縫製工場、商社は、デニムと逆の綾織をダンガリー・平織をシャンブレーだと認識していたとします。

一方、Aブランドはダンガリーとシャンブレーが逆だと思い込んでいたり、社内用語がそうなっていたとします。

こういう場合、必ずトラブルが起きます。

Aブランドが「ダンガリーシャツ100枚」と製造注文したとします。当然、生地屋や縫製工場はあのダンガリーをイメージして生地をそろえて縫製します。

出来上がった商品をAブランドに納品すると、Aブランドからすると「これはダンガリーシャツじゃない」ということになります。Aブランドがダンガリーだと思っている生地は実はシャンブレーだからです。

このブログを読んでいるみなさんは、「そんなバカな」と思われるかしれませんが、こういうトラブルが実は頻繁に起きています。ダンガリーとシャンブレーは一番トラブルを引き起こしやすいですが、それ以外の素材でもこういうトラブルが珍しくありません。

業界全体の用語の定義がファジーだからです。ファジーさは業界の魅力でもありますが、逆にデメリットも少なくありません。せめて様々な用語くらいは正しい定義を覚えたいものです。ひいてはそれが個人の業務を効率的に進めやすくなることにもつながります。

他社とトラブルが絶えないブランドやショップは一度社内で使っている用語を見直してみてはどうでしょうか。随分と仕事が効率的になるかもしれませんよ。

 

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】