ZOZOSUITは試着問題を解決できるのか?

もうご存知の方も多いでしょうが、スタートトゥデイが瞬時に採寸できるボディースーツ「ZOZOSUIT」を発表しました。
アパレル業界では話題騒然です。

これを希望者に無料で送付するとのことです。
本当に革命的です。

で、これでスタートトゥデイは、これまでの会員の個人情報(住所、生年月日、購入履歴など)に加えて、希望する何十万人かの体形データも把握することになります。
正直、一企業にそこまでの個人情報をゆだねるのは気味が悪いので、当方はこれを利用しません。
そもそもZOZOTOWNで買い物をしたこともありませんし、今後もよほどの掘り出し物でもない限り買い物をするつもりはありません。

しかし、このスーツの意義はすさまじいものがあります。
これからはフルオーダーはコスト的に無理としてもパターンオーダー、イージーオーダーがスーツ以外でも簡単にできるようになります。
腕が少し短めだからMサイズで腕は短めにとか、Sサイズで股下は長めにとか、そういうことが簡単にできるようになります。

このスーツの開発費用、製造費用、発送費用と一体どれほどの開発資金をつぎ込んだのか、個人的にはそこに興味があります。

アパレル業界が騒然となるのも理解できます。

これによって、「究極のフィット感」が実現でき、服が人に合わせることが可能になります。
理論上は。

アパレル業界、メディア業界はミーハーでちょっとアレな人が多いので、今のフィーバーぶりには少しばかり距離をとって見る必要があると思っています。

たしかに体形を把握できれば、それに適した服作りが可能です。
おそらくスタートトゥデイは公表していませんが、どのような製造コストでどれほどの枚数を製造するのかをシビアに計算して算出している(もしくは算出しつつある)と考えられます。

一方、「究極のフィット感」という中二病丸出しみたいなキャッチフレーズですが、これは実現可能であるとともに、どこまでのフィット感にするのか、逆にどれほどのルーズ感にするのか、というのが相当に重要になってきます。
体形データを手に入れるということは、相当に大きな出来事ですが、そのデータを使って、どういうサイズ感にするのかを決定するのは相当に難しい作業になります。

単純にZOZOスゲーとか言ってる人はそのあたりを考えているのでしょうか?

究極のフィット感と言ったって、本当にタイトフィットさせるならレオタードみたいな感じになります。
ZOZOのPBは今のところベーシックカジュアルと発表されていますから、レオタードみたいなシルエットになることはあり得ません。

じゃあ、レオタードとはいかないまでもタイトフィットにするのか、逆に体形データを生かしたルーズフィットにするのか、それともその中間的なサイズ感にするのか、このアレンジは非常に難しい作業です。
正解がありませんから、どれを選んでも良いのですが、選択を間違えると、テクノロジー倒れになってしまうことになります。

おそらくスタートトゥデイもあれこれ頭を悩ませているのではないかと思います。
外野のミーハーが思っている以上にここの部分の決定は困難です。

また、これを活用することで試着しなくてもネットで買えるようになりますが、その一方で、やっぱり生地の厚さは実物を触ってみるまで分からないという状態は解消されません。
ちょっと分厚いジャケットが欲しかったのに、買ってみれば意外に薄い生地が使われていたなんてことはよくあります。

ネットで購入する際に生じるハードルの1つであるサイズ問題はこれで解消されますが、生地の薄い厚いという問題は依然として残ったままです。

フィット感のアレンジをスタートトゥデイはどのように提案するのでしょうか?
注意深く見守りたいと思います。

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】