今もっとも嫌われるのは”見せかけの姿勢”

もう12月ということを受け止めきれずにいますが、

ここのところ、年末ということもありマーケティングやものづくりについて自分の考えをまとめ直したり、可視化してみたりという作業を繰り返しています。

インターネット上で言うと、たとえばインスタグラムがマス落ちしつつあり、当初のイメージだった”おしゃれな人がおしゃれな写真をあげるアプリ”ではなくなりました。ECなどオンラインへの注目度はさらに高まり、ITやテックとの交わりに前進を感じた一年でもありました。

消費者としてのわたしたちの生活は、技術が進むたびに素早く、しかし知らず知らずのうちに変化していきます。

同時に作り手としてのわたしたちの今後はいかにそれを感じ取れるかにかかっています

さて、ちらりと最初にインスタグラムの話をしましたが、今日は少し専門用語も交えて、マーケティングの変化について考えてみたいなあと思います。

 

透明になった世の中で、何が顧客を不安にさせるのか

ネティズン という言葉をご存知でしょうか。

ネット+シティズン、それはつまりインターネットに帰属意識をもつ人たち。のこと。

以前書いたことがあるように、インターネットがもたらしたのは、それ以前よりも透明な世の中。

企業が顧客を”ターゲット”とみなし、攻め入るかのように時にオーバーな主張して購買欲求を掻き立てる縦のプロモーションではなく、より価値観が似ている誰か(のアカウント)から情報を得てリアルな意見、横のつながりに答えを求める。

そう、顧客は、企業が行うプロモーションに全体として懐疑的。

これを従来のマーケティング(偉い人たちは伝統的マーケティングという)とするならば、オンラインでは違うコトが起こっているのを頭に入れなくてはならない。

私たちは、いつからか顧客に許可を求めています。

メールマガジンを受け取りますか?

プッシュ通知を受け取りますか?

それはfacebookの友達承認と似ていると、偉い人は言っています。

これをマーケティングの世界ではパーミッションマーケティングと呼ぶのですが、

コトラーのマーケティング4.0ではこれを上手いこと言っていて

パーミッション(許可)を求める時、ブランドは餌をぶら下げたハンターとしてではなく、力になりたいと心から思っている友達として行動しなければならない。”

これは本当にデジタルネイティブからうまれた発想と言っていいはず。

横に繋がっているかどうか、横に繋がっていくかどうかを彼らは非常に気にする。

さらにその中で顧客は常に「真正性」を気にする。

これはひょっとすると言葉通りに受け取ってはいけないかもしれない。

それは例えばファッションなら「ファッションの文脈として真か偽か」というような頭でっかちな話ではないのです。

一言で言えば「友人として嘘つきではないか」そんな感覚に似ている。

 

見せかけの姿勢が不安を生む

 

あらゆる飲食店のレビュー、家電の価格比較、旅行の宿泊先のホテルの口コミ、アマゾンのレビュー・・・・そういうものをまったく参考にしない人ならば、「あの人が着ているあれが着たい」を批判してもいいかもしれません。

企業の発信よりも、見ず知らずの買っている人の感覚にどことなく信ぴょう性を感じるのは、ファッションに限らずとも言えることでしょう。

先の章でも書いたように、いままでの企業と顧客の関係は、企業が発信し顧客が受け取るという形で成り立ってきました。

そこには、虚偽やそれに似た誇張があったことは誰だって認めなくてはならないし、証明されていると言っていい。

それを知っているからこそ、消費者は客観的に評価されていない見せかけの企業姿勢を見抜こうとします

フォロワー対フォロー数を見てみたり、名前をインターネット検索してみる。

なんとなく信用できないものは買わないし、関わらない。

しかもそういう判断を彼らは一瞬でしてしまう。

2000年には12秒だった現代人の集中力は13年には8秒と言われ、金魚以下であるという悲しいニュースもありましたが、まあ金魚すごいなという気持ちになりますね。

増え続ける情報がユーザーを翻弄する中で、注意力が散漫になっている顧客を振り向かせる。

そのために必要なのはブランドの確たるアイデンティティとポジショニング。

その一貫した姿勢を、発するすべてものから感じ取れるようにしなくてはならないでしょう。

 

オフラインの重要性

いくらインターネットが普及しようとも、満員電車も解消されないし、休日の街のカフェにはなかなか入れない。

結局のところ、人々は家の外に出てきているわけです。溢れるほど。(溢れた人)

そこにデバイスの存在はあるにしても、オフラインの場が不要になるのはもう少し先でしょう。

全てがデジタル化されればいいという意見もある中、個人的にはどう見ても市場がそう言っているようには思えない。

便利になってほしい、でも冷たくはならないでほしい

結局のとこと人間というのは人間らしさを求めている気がしてならないのです。

それはネティズンであればあるほど。

パーソナライズということが言われてまあまあ経ちますが、それは脱同調ではない。

彼らは人に同調したい。共感したい・されたいという気持ちが強いと言われているのも頷けます。

そのかわりインターネット的であればあるほど、人と人の関わりに有意義な意味を求める。

インターネットで済むことは、そちらで済ませたいという当然の理由ですね。

マーケティングの仕事は、顧客が購買までに通る道の整備のようなもの。

オンラインが主流になるのなら、オフラインでより意義のある顧客との関わり方を追求する。

オフラインにしかない真正性の高い体験が、ブランディングを効果的にすることも大いにあるのではないでしょうか。

 

 

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中溝 雪未
About 中溝 雪未 69 Articles
1990年生まれ。コレクションブランドの企画室でインターンからデザイナーアシスタントとして勤務。その後アパレルブランドで布帛・ニットをはじめとするデザイナーの経験を積み独立。現在フリーランスとして企画・デザイン・パターンを担当。 プロダクトアウトなものづくりからマーケットインまで、偏らないバランス感覚を武器に、コンセプトメイクからお客様に届くまでをディレクションするプランナーとして業界を問わず活動中。