実店舗重視・接客重視の潮流も見え始めている?

こんばんは。南です。

ファッショントレンドは何年かに一度戻ってきます。戻ってきますが、そのときは以前とはどこか違う形に変化しています。パルグループの井上英隆会長は「ファッションのトレンドはまっすぐ行って戻ってくるのではなく、らせん状に戻って進む」と常々語っておられます。

例えば一昨年ぐらいからMA-1ブルゾンが再トレンド化しました。実に20年ぶりくらいの復活です。ぼくが20歳ごろに大流行したアイテムで、その人気は97年ごろまで続きました。しかし、それ以降はまったくトレンドに浮上しませんでした。

元来のMA-1ブルゾンは身幅も広く、アームホールもゆったりしていますが、2014年くらいから復活したMA-1ブルゾンは身幅もアームホールもスマートなシルエットになっています。

またコーディネイトも当時は、レギュラーストレートジーンズに白いTシャツ、その上からMA-1ブルゾンというのがトレンドでしたが、リバイバルではそんなガチガチのアメカジではありません。もっとミックステイストになっています。

らせん状に戻るというのはこういうところを指すのでしょう。

ファッショントレンド以外の世の中の潮流も振り子のように揺れて、何かが主流になると必ずそのうちに揺り戻しがきます。しかし、その揺り戻しもまっすぐには戻らず斜め方向に戻ってきます。

商業施設や販売に対する考え方も同じで、現在は揺り戻し時期にあります。

プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、地場産業支援などを行うセメントプロデュースデザインの金谷勉社長とは、もう8年くらいの付き合いになるのですが、彼は「ITバブルの象徴だった六本木ヒルズが話題になり、その次に話題になったのはメイドインジャパンや職人技を打ち出した東京ミッドタウンだった。この2つのふり幅が象徴的」と指摘されています。

で、昨今はルームスでもだだっ広い地場産コーナーが作られ、各商業施設で地場産業・産地企業のポップアップショップが乱立する状況になり、正直、もはや「地場産業、産地振興、手作業、職人技、匠、こだわり」というキーワードはだれもが食傷気味ではないでしょうか。少なくともぼくはうんざりしています。ぶっちゃけ「またかよ」としか思わないことも増えました。

金谷社長は「そろそろ揺り戻しが来る」と指摘しておられ、それはITとかデジタルの方向だろうと予想しているそうですが、六本木ヒルズのころのITやデジタルではなく、別方向に跳ねるのではないかと言います。

それがどんな形なのか見えている人はあまりおられませんが、これから行われる銀座再開発ではその方向性が模索されているそうです。

さて、販売についてですが、これまで店頭接客が最重要視されていましたが、インターネット通販の急成長によって、今は猫も杓子もアホの一つ覚えみたいに「オムニチャネル」と連呼しています。意味がわかっていないと思われるオッサンまでもが連呼し始めており、個人的には少々うんざりしています。

そろそろ揺り戻しが来て、それが斜め方向に跳ねそうな気配がします。

三越伊勢丹の大西洋社長は、改めて販売力強化を打ち出し、売上高多さによって給与を厚くするインセンティブ制度を導入しました。これまで百貨店の店員は年功序列以外にほとんど給与に格差がありませんでしたが、これを見直す動きになっています。

猫も杓子もアホも「オムニチャネル」時代に、逆に店頭接客強化を打ち出しているというのは揺り戻しの動きではないでしょうか。

また、このトップセラーもデジタル、オムニチャネル時代真っ只中で立ち上がっており、これも手前味噌ながら揺り戻しの一環ではないかと思います。

小売店やデザイナーを取材していても、ここにきて、「実店舗の強みを再認識する」という声もあがっています。別の仕事で先日お会いしたデザイナー、丸山敬太さんも「売り場があることが実は強みではないかと思い始めている」と話しておられました。

デジタル、ITからの揺り戻しでの実店舗重視、接客重視の新しい形態はどのようなものになるのでしょうか。ぼくも答えは見えませんが、みなさんで一緒に考えてみませんか。明らかに今は過渡期にあると思います。

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南 充浩
About 南 充浩 51 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿

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