原価率が高いことが必ずしも商品の品質が高いということにはならない理由

トウキョウベースが「ステュディオス」で「原価率50%」を打ち出してから、雨後の筍のように「原価率〇〇%」というブランドが現れましたが、彼らの言う「原価率」とは製造原価率でしょうか?仕入れ原価率でしょうか?

仕入れ原価率だとするなら、通常、仕入れ値は定価の60%というのがルールです。
とすると通常の専門店はほとんどが「原価率60%」ということになります。
ブランドから仕入れる場合、最近では60%よりももっと仕入れ値は低下していますが、それでも40%を下回ることはほとんどありません。
となると、専門店は最低でも「原価率40%」ということになりますから、珍しくもなんともないということになります。

恐らく、雨後の筍がいう「原価率」とは製造原価率なのだと思います。
彼らがそれを言い始めたのは旧大手アパレルが不振に陥って、利益確保のためにどんどんと素材や縫製のクオリティを落としたり、工賃を叩いたりして製造原価率を下げたことに対するアンチテーゼだったのだと思います。

某百貨店向けレディースアパレルのセーターブランドは、年々クオリティを落として、2010年頃には製造原価率が18%くらいまで低下したと言われています。
この商品の店頭販売価格は2万円くらいしていました。

たしかにこういう商品が氾濫したことで大手アパレルは信用を失い、業績の急落の一つの要因となったのだと考えられます。

しかし、その一方で、製造原価でも仕入れ原価でも「下げよう」とするのはアパレルに限らずどの分野でも正しい姿勢だといえます。

皮肉な言い方になるかもしれませんが、原価率を上げることは簡単なのです。
物作りでいうなら、非効率な物作りをすれば簡単に原価が上がります。

一番、簡単に原価が上がるのは、作る数量が極端に少ない場合です。
それぞれの工場は自社のサイズにあった生産数量をミニマムロットとして定めていますが、それを大きく下回る数量を発注すれば、アップチャージによる値上げが発生して工賃は上がります。
工賃が上がるので必然的に製造原価が上がります。

ミニマムロットに達しない場合のアップチャージは縫製だけではありません。
生地も同様で、通常、生地は1反(50メートル)を洋服にすれば、提示した値段通りになりますが、1反未満だとアップチャージとなり生地値は上がります。

用尺2メートルとすると1反だと25着の服が作れますから、例えば10着しか服を作らないなんてことをすれば、生地値と縫製工賃の両方にアップチャージがついて、製造原価は上昇します。

良い物を作るために製造原価が上がったというのと、作る数量が少なすぎてアップチャージで製造原価が上がったというのは、まったく別物です。

今、「原価率〇〇%」と謳っている雨後の筍は、果たしてどちらなのでしょうか?
当方には結構な数で後者が含まれているように見えますが。(笑)
原価率が高いから一概に品質が高いとは言えないのです。
販売員のみなさんもお気を付けください。

 

 

 

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】