コットン、または綿は衣料品においてかなりメジャーな天然短繊維になります。あえてここでただ天然繊維と書かず、天然短繊維と書いたのはあとで理由を述べます。
あまりにもナチュラルにありすぎて、実際なんなのかをよく知らないままでいることって結構あります。そんなありふれた繊維『綿』というものに今回は光を当てていきます。
まず、コットンってどんな感じの姿か思い浮かびますか。
こんな感じの花が咲くアオイ科の植物で、この花が咲いたあとに花弁が落ちて果実っぽい部分が膨らんで弾け、ホワホワとした『ワタ』が採れます。
僕は残念ながら日照時間が不足してしまったため、今年の収穫は種だけになりましたが。。。
この白くてウネウネしてるのが乾燥してホワホワになったのが、コットンの繊維です。
ホワホワの状態はみなさんどこかしらで見かけたことがあるかと思いますが、こんな感じです。
(大正紡績様のホームページから使用承諾済)
この種類はインド元来種のSUJATA(スジャータ)と海島綿種のSt.VINCENT(セントビンセント)を交配させたハイブリッド種でSUVIN(スビン)という超長綿になります。お店に出ている商品で聞いたことある方もいらっしゃるかもしれませんね。『綿ろう』という油分をたくさん含んでいるので、いわゆるコットンのホワホワとした印象より、しっとりとした見た目になっています。
今さらっと超長綿とか言っちゃいましたけど、綿と一言で言っても実はその種類というのはかなり多くて、それぞれの種類にそれぞれの良いところがあります。
品種や銘柄などでまとめがちなのですが、名前のついた綿もそうでない綿も、繊維の長さである程度の大分類があります。
下記は綿花から取れる綿繊維の長さの平均値ランク分けになります。
・超長綿
34.9mm以上
・長綿
28.6mm~33.3mm程度
・中長綿
26.2mm~27.8mm程度
・中綿
20.6mm~25.4mm程度
・短綿
20.6mm未満
植物から採れる繊維なので、あくまで平均値であり、一つの品種の中でもこの基準に満たない繊維がでたり、それ以上の長さのものがあったりもします。
最近、綿製品のハイグレード感を訴求する文面で「長繊維綿」という言葉を見かけるようになりましたが、天然繊維において長繊維という言葉が許されるのは一つの繊維の長さが1,200mほどもあるシルクだけで、それ以外の天然繊維は全て短繊維です。なので長繊維綿というのは正しくありません。冒頭であえて天然短繊維と書いたのはこのためです。
繊維長が長い超長綿は生産の絶対数が少ないので希少という点がまず高価な理由です。繊維長が長いと細くてムラのない綺麗な糸が作りやすいです。なので高級衣料品向けというのがセオリーですが、最近はどういう訳か、安価でも高級原料の銘柄が登場しているので、原料の高級さというのが陳腐化しているのが現状です。
一般的に安価な衣料に使用されている特に銘柄のついていないコットンに関しては概ね中綿~中長綿程度のものが中心です。
短綿は細い糸を作れないので、資材むけや軍手などがほとんどです。時々その風合いの出方を面白いとして衣料用途にも使用されています。
コットンは繊維の長さに加え、繊維の細さも風合いに影響します。高級原料は繊維が長くて細くて強いものほど高級とされています。
繊維が細いと光が乱反射して鈍い上質な光沢感になり、取ってつけたようなキラっとした輝きではなくなります。
また油分を多く含んでいるため、袖通りの良い滑り感があります。
これらの高級原料の特徴は最近では後加工でも付与することが可能になっていて、似たような風合いというのは高級原料を使わずとも再現できるようになってきています。なので真贋を見抜くのはなかなか難しいと思いますが、実際に触れて確かめて体に覚えさせていくしか道はありません。
これはコットンに限らず、ウールもシルクも天然繊維の原料ランクというのはどの繊維にもあります。良いものという定義が原料ランクの上位を意味するのであれば、それを知るというのはとても意味のあることのようにも思われます。