盆ですか、そうですか。いや販売員の皆様は盆休みっていう概念ってあまりないですよね。
暑い中お仕事お疲れ様です。繊維産業のフロントマンとして洋服をお客様にご提案してくださっていつもありがとうございます。
カットソー商品の中でもアイテム数が多いTシャツ、夏の装いにはとても重宝しますよね。
最近はカットソーだけじゃなく、ニット(横編み)や縦編み生地を使ったTシャツも多いですし、織物で作っているものも見かけるようになりました。
各メーカー様はさまざまな工夫を凝らして、いわゆる『Tシャツ』との違いをご研究されているとは思いますが、まだまだTシャツは丸編み生地で作られていることが多いです。
そんなTシャツで『斜行した』経験ないですか?
『斜行』とは、わかりやすく言うと、脇線がよじれてしまうことです。(下の写真参照)
これ、入荷時すでにこの状態のこともあるかと思いますが、仮に本来の脇線で入荷していても、お客様がご購入後に洗濯をしたらこうなったというクレームってあると思います。
こうなっちゃうとたたみにくかったりして、結構厄介だったりするんですよね。
生地不良で片付けられやすいですが、丸編みの特性上、実は避けられないことだったりもします。
丸編みというのは字の通り、丸く編まれた生地です。丸く編まれたとは、言い換えると編み目を螺旋状に作っていくことです。こちらも下の図を見てもらうとわかりやすいのではないでしょうか。
こんな感じで螺旋に編まれた筒状の生地を切り開いて反物にしていくので、縦目にそって切り開いた場合、そもそも横目は斜めになるのが自然の状態です。または横目を水平にした場合は縦目が斜めになります。
なので、厳密にいうと地の目(生地の縦目と横目)は直角になりません。
しかし生地を作っていく上で縦横に引っ張りながら整えていく作業が入るので、生地として縫製工場に入荷する頃には、自然の状態よりも少し地の目の縦横を矯正された状態になっていることが多いです。
また多くのTシャツ生地は単糸(-タンシ-一本よりの糸)で作られていることが多いです。
単糸は繊維を撚っている(物理的にひねっている)ので、洗った後などに繊維が元の形に戻ろうとするエネルギーが生まれます。
これらの生地作り過程での複合的な要因から、商品になった後に洗うと生地や繊維が元の姿に戻ろうとするチカラが加わり『斜行』という現象が起こります。
じゃもう、諦めるしかねぇじゃん(´・_・`)ってなるんですが、完全に防げないものの、ある程度軽減できる方法があります。
①双糸(ソウシ)または三子糸(ミコシ)を使っている生地を選ぶ
→単糸(タンシ)の撚られているエネルギーを相殺するように反対方向に二本、または三本の糸で撚られている糸を使っている生地は斜行しにくいです。
※双糸は番手表記上、例えば20/2または2/20などと書いてあるもののことを指しますが、時々20/2と書いてあっても商品名にサイロスパン(またはサイロスピン)or精紡交撚(セイボウコウネン)と書いてあったら、双糸の表記になっていても糸の構造は単糸なので斜行すると考えた方が良いです。ちなみに三子糸は20/3や3/20と書いてあります。
②ダブルの編み地でできているものを選ぶ
→フライスやスムース、ワッフルなど、表から見ても裏から見ても生地の見た目が同じものは糸の撚り戻りのエネルギーが表裏で相殺されているので斜行しにくいです。
※接結と書いてある生地は天竺を表裏で繋いだような生地なので斜行はしにくいですが、しぼしぼになる可能性が高いです。
最近は生地屋さんも生地の名前にエンターテイメント性を持たせているので、正確な糸番手表記や生地組織の解釈がむずかしかったりします。
そういうところも含めて商品企画の際に生地の素性をきっちり聞いておくと、後々のトラブル回避に役立つと思うので、販売も企画も製造も連携することはとても大切なことだと、僕は思います。