ECを支援する立場の人間であれば、誰もが「D2Cブランドを作りたい」という相談を受けた事があるのではないでしょうか。今や、新規でブランドを始めるなら店舗起点でスタートするケースの方が少なく、誰もがオンライン起点でイニシャルコストを下げたいと思うでしょう。その解こそ「D2C」であると捉えられているようです。筆者も仕事柄、このような相談を非常に多く受けるのですが、そのどれもがメディアや起業家が流す適当な情報に踊らされている印象があります。

本記事では、筆者が知る限りの「D2Cブランドの正しい作り方」を記載していきますが、これは攻略法などではなく「手順」と「注意点」になります。そうそう都合良く、誰もが成功できるスキームなどありません。やらなければならない事を、当事者が出来るかどうかだけのお話です。

このようなタイトルで情報を発信するのは憚られるのですが、最近あまりにも間違った情報がインターネット上に蔓延しておりますので筆を取った次第です。定義がはっきりしないD2Cですが、ここでは「小資本でオンラインからスタートするブランド」としてお話していきたいと思います。

見込み客の獲得

小売ビジネスで最優先されるのは「顧客リスト」の数です。ブランドをスタートするなら、まずどれだけ自分の商品を買ってくれる顧客を持っているかで勝負が決まります。オンライン起点のブランドならソーシャルメディアのフォロワーがこれに該当します。フォロワーの増やし方に関しては、Topseller.WebStyleの「Social media marketing」及び「Influencer marketing」をお読み頂ければ大概の情報は網羅されています。

「フォロワーが多くても売れない可能性」はありますので、いくつか注意点を記載しておきます。インフルエンサーを活用してブランドを始める場合、下記項目に当てはまるならどれだけフォロワー数が多くてもブランド運営をしていくのは難しいでしょう。

・容姿が優れているだけ
・文章が下手
・マメさが無い
・フォロワーからの拡散が無い

フォロワー数が増える要因は様々ありますので、数が多くとも「ユーザーがその人から商品を買いたい」と思っているかどうかは別の話なのです。

また、上記をクリアし、ブランドをスタートした後の注意点も記載しておきます。

・フォロワーの属性と商品がミスマッチ

自分の顧客の属性の理解ですが、ここが所謂ブランドコンセプトと密接に関わってきます。もちろんコンセプトは言語化した方がいいのですが、それが無ければ売れないという事もありません。

筆者が第一優先にブランドのコンセプトメイクを持ってこなかった理由は、売れているD2Cブランドでもコンセプトをはっきりと言語化していない場合があるからです。それでも自分の発信している内容と顧客の属性を理解していれば、顧客が求めている商品の提案は可能です。これは小規模でやっているからこその現象ですね。チームで運営する場合は、ブランドの世界観を言語化して共有しなければ施策がブレるのですが、個人ならコントロール可能でしょう。裏を返せば、規模拡大したいならコンセプトの言語化が必須になるという事です。

・インフルエンサーの意見だけを聞いてブランド運営する

ファン獲得はインフルエンサーの役割になりますが、それだけではクリア出来ないのが「商品力」です。当事者がアパレルビジネスに精通しているなら対応出来る可能性はありますが、デザイン・パターン・素材や生地・トレンドの把握など商品力を担保する為の要素について素人では判断が難しいでしょう。ここを怠ると、1周目は商品が売れたとしてもリピートはありません。ECはリピート命のビジネスなのですが、簡単にリピート率を上げるのであれば商品力を上げるのが一番なのです。

・個人が前面に出過ぎている

インフルエンサーを活用する場合、モデルも本人を採用すると効率が良いのはわかります。初期フェーズはそれでも良いのですが、どうしても旬はあります。いつまでもインフルエンサー個人がアイコンでは初速の勢いを維持するのは難しいでしょう。継続しているD2Cブランドを見ていますと、「インフルエンサー本人の人気が全く落ちない」か「インフルエンサーを前に出さない」のどちらかです。後者の方がハードルが圧倒的に低いので、一定期間が過ぎたらブランドとインフルエンサーの人格を切り離していくのが良いでしょう。中には初期フェーズから切り離しているブランドも存在します。

こちらの3点が失敗する、もしくは短命に終わるケースですね。ご注意ください。

ブランドコンセプトと想定ターゲットによりますが、インフルエンサーを起用せずともSNS広告で見込客の獲得は可能でしょう。見込客としてのフォロワー1名獲得するのに高くても広告費が200円程度あれば実現できるかと。初期にブーストし辛いでしょうけど、地道にファンを増やしていくならこのようなやり方もあります。

商品の担保はどうしたらいい?

顧客が増えたところで次は商品が必要になります。ですが先述した通り、ここを一人でやろうと思うと危険です。自分のツテやソーシャルメディアを利用して有識者と繋がる事をお勧めします。その場合、有識者の良し悪しを見極める必要も出てきます。

韓国で適当に買ってきたり、タオバオで仕入れた商品に自ブランドのタグを付け、Instagramのヴィジュアルだけ見せ方を変えても継続的ではありません。リピート率が上がらないので、常に広告費を投入し続け売上を担保するしか無くなります。販管費が嵩み過ぎる上に、売上を伸ばそうと無理に在庫を積む事になり、数年後には多額の累積赤字と在庫過多です。

有識者と繋がれば、まずは仕入れ先を確保しましょう。OEM・ODMと呼ばれる業態の事業者と取引が出来れば、最小ロットがTシャツ・スウェットだと1型1色2サイズで100点程度で仕入れが可能になります。(事業者と仲が良い人と繋がると1型1色2サイズで50点から70点でも可能なケースはあります)中には大手アパレルと取引している事業者もありますので、商品のクオリティも担保しやすいでしょう。仕入れと売上の目安としては、

1週間に1型100点の新作を発表

5000円×100点で500,000円の売上

1ヶ月2,000,000円の売上

年間で24,000,000円の売上

こちらが最低ラインでしょうか。逆に、これが実現出来ないようなら先ほどの項目に戻り、ファン獲得を先に頑張ってください。この時点で「仕入れ」なので、ダイレクトでも何でも無いのですが、自社で製造まで担保しようと思うとめちゃくちゃ大変ですし、そもそもD2Cの大半はそんな事までやって無いでしょうから勝手に良しとしておきます。

次に、インフルエンサーのファンをブランドアカウントに移します。ブランドアカウントが5000〜6000フォロワーくらいに増えるのであれば上記は実現可能な水準と考えて良いでしょう。(エンゲージメントが低い場合はその限りではありませんが)ブランドアカウントは店頭で言うところの顧客名簿と同様です。

1週間に1型100点の販売と言いましたが、1週間で売り切る訳ではありません。100点を売るのに必要な時間は3時間です。可能であるなら50点でスタートですね。テスト販売してみて、数時間かかるようなら発注数を落としてください。早い人なら10分で完売します。

3時間で100点完売が可能になって初めて年間3000〜5000万円を在庫を残さず運営できるブランドになります。何故、消化スピードが求められるのか?ですが、お客さんにちょっとでも「あのブランド、急がなくても買える」と思われてはいけないのです。お客さんの飢餓感を煽る事で「早く買わないと無くなる」という心理状態にさせる。それによってブランドの息が長くなるといった具合ですね。中には、完売していなくてもイメージを良くする為に商品を引いてしまい「完売しました」と告知しているケースもありますが。

少々売上が作れるようになったからと言って、すぐ規模拡大しようと思うのは早計です。商品の型数が増えると、その分在庫が増えやすくなります。店舗が無い上に、MDの技術・知識が無い規模拡大は非常に危険です。拡大したいなら小規模ブランドを複数作る方が安全でしょう。

間違った情報を鵜呑みにしない

よくメディアで成功事例のように報じられているD2Cブランドの多くは企業やVC(ベンチャーキャピタル)から資金調達しています。VCから資金調達する際、手堅いプランは好まれません。所謂「Jカーブ」的な成長を求められ、初期フェーズは赤字を掘る事を厭わないプランが受け入れられやすいです。

そのせいか、D2Cブランドのニュースで「○○億円の資金調達を実施」という文字をよく見ますが、決算公告を見ると大赤字だったりします。先述しましたように、アパレルで売上を伸ばそうと思えば、単純に在庫を積んで販促費をめちゃくちゃ使えばいいのです。どれだけ赤字だろうと、またどれだけ在庫過多に陥ろうとも、決算さえ公開しなければ売上が大きく伸びて成長しているように見えるのですから。

D2Cはその特性を考えると、小資本で事業がスタート出来る事にメリットがあるはず。つまり多額の資金調達は本来必要無いのです。調達するにしても、銀行や日本政策金融公庫から借入をおこし、自己資金でやればいいのです。この事実を知らずに「短期で売上が伸ばせる」と早計に考えたり、「これからはD2Cこそが勝ち筋」と勘違いしないで頂きたい。やっている事は過去から変わらずあくまで「アパレル小売ビジネス」に他ならないのです。

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