キャリア論、第二弾はファッションテック企業「DeepValley」を経営する深谷玲人さん。徹底した合理主義と差別化戦略から編み出されたキャリア論は若手アパレル業界人にも大いに参考になるかと思います。

深谷玲人(Twitter:@fukaya_reito

株式会社DeepValley 代表取締役。ワールドの店頭からキャリアをスタートし、ディストリビューター・卸営業・EC担当・MD・ブランド責任者と多様なキャリアチェンジを経験。現在、アパレル製造をデジタルで繋ぐSaaS「AYATORI」を開発・運営。幅広いキャリアを経験したからこそわかる、アパレルの課題点解決を目指す。

 

「喜ぶ人」の総数を増やしたいという思いがキャリアを形成

四:今ではファッションテック企業を経営している深谷さんも、初期は店頭からキャリアをスタートされたんですね。

深:はい、アパレルに飛び込んだのは18歳の時でしたが、最初はワールドで商品管理からスタートしています。untitledというブランドでしたね。

四:当時ってワールドはかなり勢いがあったんじゃないですか?

深:はい、結構な大型店で、店頭販売員14名、商品管理が3名という構成でした。売上も月1億円くらいありましたね。

四:そこからファッションテックって、キャリアの辿り方が中々想像つきにくいですね…。まずはワールドで本部昇格したんでしょうか?

深:いえ、その頃は本当ダメダメで。特に、朝起きれなくて1ヶ月に1回は遅刻してましたね(笑)こんなこと言っても説得力全く無いんですけど、仕事は真面目にやってました。ただ、ちょっとしたきっかけから「このままじゃまずいな…。」と思うようになりました。

四:キャリアチェンジのきっかけとなる何かがあったんでしょうか?

深:たまたま、同僚の給与明細を見てしまったのですが、同じ商品管理の人が31歳で額面が25万円だったんです。18歳当時の僕が22万円でしたので、「あと13年いても3万円しか上がらないの?」と衝撃を受けました。

四:いわゆる「ランナー」の業務だから付加価値が低いですしね。それで内勤を目指すようになったんですか?

深:そうですね、その頃から自分の動き方に変化が出てきました。土日になると本部から店頭に人が来られるので、とにかく全員に話かけましたね。まずは目に留めてもらわないと始まらないので。

四:でも結果、ワールドの本部には上がってないんだ?

深:はい、そこで本部の方と一緒に来られていた「ジョイアス」というブランドの方に目に留めて頂きました。話しているうちにスキルを認めてもらい、本部勤務として転職する事になります。その頃から、どうしたらより多くの人に喜んでもらえるかを考えるようになりましたね。

四:確かに本部に行くと、個人に振り分けられる予算や任される事業の規模は大きくなるからね。

深:そうですね、その「喜んでもらえる人を増やしたい。」という思いは今も変わらず持ち続けています。

 

「やりきる」からこそ身につくスキル

四:本部に昇格した後はどんな業務に携わったんですか?

深:まずはディストリビューターですね。そこからMDに昇格しました。そこも1年足らずで転職したんですけどね。

四:転職するの早いね(笑)転職も使いようによっては多彩なスキル習得につながるから、マイナスなだけでも無いんだろうけど。

深:もちろん、スキル習得が目的ですから、やりきったと思ってから転職しています。やりきった後は、「もっと違うスキルが欲しい」って気持ちが強くなるんです。次はECと卸業務がやりたかったので、その担当者を探していた「ドロシーズ」というブランドに転職します。ここでは2年間でブランド売上を2000万~5億に成長させることができました。

四:それめっちゃすごいね。簡単にどうやったか教えてくれる?

深:アパレルの卸って、商品を得意先に納品したら終わりってブランドが多いんです。なので、そこと差別化するには、卸先にどんどん提案していく必要があります。例えば、これから取引したいと思うショップの取り扱いブランドから、どんなアイテムが合うか推測し、周辺からは何が売れているかをヒアリングします。その時に似ているショップ、つまりベンチマークを探すといいですね。店舗の展開面積や売上から仕入れ金額や在庫を予測しておくと、金額面でも提案はしやすくなります。こういう風に、VMDや展開ゾーンを想定した上で自社ブランドを提案しますと、考察がはまれば刺さりやすいし予算割いてくれます。あとは納品後もこまめにフォローします。他店でのセールストークの成功事例や競合の情報をお話したり、自社の直営で売れてなくて卸先で売れてるものは積極的に提案したり。コミュニケーション取るのも大事なんで、よく商品担いで出張回ってましたね。得意先が展示会来られたら絶対一緒に飲みにも行ってました。

四:自社の直営店並みの扱いだね。でもそこまでしないと、卸先の消化率なんてコントロールできないもんね。ていうか、to B向いてるね(笑)

深:自分でも思います(笑)でも、またすぐ転職しちゃうんですよ。今度は「デフィー」というブランドのブランド責任者と、その後にマークスタイラーの新規開発部の部長になります。この頃に、今、世に出ているインフルエンサー系ブランドの走りを企画していました。ブランド開発は今までの集大成みたいなお仕事なので、多様なキャリアチェンジが活かされましたね。

四:これは若い人にとってすごく参考になる事例だね。キャリアに悩んでいる販売員も多いだろうから、最初から何年でどのスキル習得を目指すといったロードマップ描いておけば、目標も明確になって動きやすい。

深:自分が何やりたいかって意外とすぐ変化してしまうから、そういう意味でも多様なスキルは潰しがききますね。マークスタイラーでインフルエンサー系ブランドを手がけた経験があるから、今こうやってファッションテックの領域に進んでいますし。同社は中国の投資会社に買収されるんですが、その頃から新規ブランドへの投資も減っていったので、ちょうど良いタイミングでもありました。

 

いつも根幹にあるのは「ファッションが好き」という思い

四:じゃあその時点で初めて独立したんだ?

深:とは言え、いきなりファッションテックで独立した訳ではないんです。まずはフリーランスでコンサルやってました。その頃、ベルフェイスの営業なんかも業務委託で請け負ったりしましたね。コンサルやってる時に、今度はブランド開発をやろうという事になったんですけど、そこで課題点がたくさん出てきたんですよ。工場とのやり取りの中で、「何でこれデジタル化しないの?」「履歴もつかないのに物作るって博打すぎない?」などなど。物作りをする過程において、「おかしい」と思う事が実はいっぱいあったんだなぁと。だったら自分たちでそれやればいいんじゃない?となり、今の事業「AYATORI」をスタートする事になります。

四:すごく自然な流れだね。今、大手アパレルに入ってきてるファッションテックの事業者って、お金儲けがしたいだけで、結局ユーザーの為、お客さんの為って視点が抜け落ちてるんだよね。その中で「AYATORI」は、ちゃんとアパレル特有の問題点に向き合ってる。これ、ファッション業界が好きじゃなかったら生まれなかったサービスだと思うんですよ。

深:D2Cブランドでもファッションテックでも同様なんですけど、最近の起業家ってIT系の企業に勤めてから起業するケースが非常に多いと感じます。でもぶっちゃけた話、ファッションでお金儲けするのってそんなに効率良いと思わないんです。長い年月をかけてブランドを育てていけば、将来的なリターンは大きくなります。でも、今参入してきている人たちって短期間で企業を成長させたように見せかけ、最終的にはバイアウトありきで経営しているように見えてならない。そんな時代ですが、僕はできればこの業界が好きで、「業界を良くしていきたい」「アパレルでキャリアアップしていきたい」と思っている人たちにスポットが当たる。そんな世の中にしていきたいと思っています。そしてAYATORIでそのお手伝いができればこんなに嬉しい事は無いですよ。

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