日本のファッション教育は腐敗している

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服飾系専門学校、一部で入学者増加

少し前の記事になりますが、繊研新聞にて服飾系専門学校の入学者数が増加していると掲載されました。文部科学省の統計がH27年までしか出ておりませんので正確な数字はまだわかりませんが、僕が講師をしている学校でも希望の光が差したかのようにこの話が取り上げられていました。

しかし、H27年までの数字を振り返ってみますと、20年前から半分の数字。減少するよりはいいですが、諸手を挙げて喜ぶ状況でもありません。

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《各種統計表――専門学校の分野別学生数の推移》(Sengaku netより)

「増加」しても解決されない販売員不足

そして一番の問題点は入学者の中身です。記事中に例として上がっているのは文化服装学院やドレスメーカー学院などの主にクリエイターを多く育てる学校中心。もし仮に入学者数の多くがクリエイターのコースにばかり入学しているなら非常に問題ではないでしょうか。前回もお話しましたが、専門学校に寄せられる求人案件では、

販売員:その他の職種=10:1

です。

 

多くの専門学生は「販売」を通過点に過ぎないと認識している

学生さんは入学前に専門学校側から夢に満ち溢れた事ばかり聞かされ、希望を胸に入学。そして二年生になる少し前くらいから自分の就職先は高確率で販売員である事に気づく訳です。こんな事ばかりしているせいで、二年生になる頃にはファッション業界に夢を見れなくなる学生もちらほら。二年生のみを請け負っているクラスがありますが、毎年の年度始めは愚痴ばかりが飛び交います。

有名専門学校には大体有名な卒業生が1人はいるものです。文化服装学院では山本耀司氏を始め、アンダーカバーの高橋盾氏、ファセッタズムの落合宏理氏など錚々たる面子が揃っています。VANTANにはアンリアレイジの森永邦彦氏、上田安子服飾専門学校には森川マサノリ氏などなど。

そのような人になれる可能性がゼロだとは言いません。では求人全体の9割を占める販売員の話をしているのか?どんなに夢を描いたところで90%の確率で販売員になるのですから、その対策と求人の事実を伝えなくてはなりません。その上でキャリアアップを目指す話をすればいいのです。

まあ「販売員を育てる」なんて営業トークで言っても確かに学生には刺さりにくい。そうなると入学者数も見込めないというのが大きな理由なんでしょう。

 

適正でない各専攻の募集人員

専門学校各専攻の募集人員の数を見ていますと、販売員のコース:その他のコース=10:1の比率にはなっていません。むしろクリエイターを育てるコースの人員の方が多い。比率がおかしいと就職の際にあぶれる人材の数が多くなります。

これではしっかりとした販売員教育を受けれず、希望する職種にも付けず、ただ就職先の確保として販売員になる人材が増えてしまいます。しかし企業によっては販売員のキャリアアップの道がちゃんと用意されており、勤務3年で本部に昇格といった事例も珍しい事ではありません。そしてそこには販売員としての実績が求められます。

更に悪い材料は、ファッション教育機関の教員はほとんどがその学校の卒業生です。若い人材を獲得すべく、キャリア2〜3年程度の卒業生に声をかけ講師を依頼する。講師を依頼された卒業生は浅いキャリアのまま講師として終身雇用。。。

つまり業界の知識・技術が無いままの講師が増える仕組みになっています。この状況では十分な教育を施す事は難しいでしょう。

 

問題の正しい理解、そして解決方法を

現場の人間ならわかると思いますが、販売員は誰でもなれる反面、誰にでもできる仕事ではありません。優れた販売員になるのは簡単な事ではないのです。だから今の市場には良い販売員なんてほとんどいません。

誰にでもできる仕事ではなく、本来の販売員のお仕事をしっかりこなせる人材を作る。そういった環境が用意されてこそ、入学者数増加を喜んでほしい。

1年後、今年入学した学生が「入学して良かった」と思える教育機関にならない限り、入学者数増加には意味は無いでしょう。そうならない為には、まず市場の正しい把握とその対策が教育機関の最重要項目ではないのでしょうか。その繰り返しが無ければファッション教育機関は今後、衰退の一途をたどるしかありません。現状を見ている限り変化の兆しは全くありませんが…。

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深地雅也
About 深地雅也 155 Articles
株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。