自社の置かれた状況を直視したくないと考える人は予想以上に多く、そういう人が上層部にいる企業は間違いなく衰退します。
アパレル小売り市場規模はピーク時の91年が13兆円で、今では9兆数千億円にまで縮小しました。40%減です。
一方、衣料品の年間国内流通点数は20億点から39億点にまで倍増しました。2014年ごろには40億点を突破していました。
これは経済産業省の統計にも出ている数字です。
このことを某社の社員がブログに書いたところ、上層部から「モチベーションが下がるようなことは書くな」といわれたそうです。このアパレルが苦境に陥っているのは、こういう上層部が跳梁跋扈しているからです。
市場規模や自社の置かれた状況を正確に把握しないことには、それへの対策など立てられるはずもありません。現実を無視した願望を抱き、それに向けて対応するのでは傷口をさら広げることになり、下手をすると会社が倒産に追い込まれてしまいます。
こういうアパレル企業はよくあります。決して特殊な例ではありません。
ぼくが以前に広報として勤務していたカジュアルアパレルも同じでした。
その会社には追い付きたい同ジャンルの大手アパレルがあったのですが、その大手アパレルが派手な販促をうち、大々的な広告を掲載しました。
そのことをほかのスタッフに知らせたところ、上層部が「みんなが委縮するようなことを知らせるな!」とヒステリックに喚き散らしました。実情を知った程度で委縮するようなら永遠にキャッチアップなどできません。
その後、すぐにこのアパレルから退職しましたが、退職してから5年後ぐらいにこのアパレルは倒産しました。当然の結果だといえます。
なぜなら経営者が自社の置かれた立場や、競合相手の動向を正確に知ることを拒み続けてきたのですから。
こういう人は経営者には向きません。企業は根拠のない願望を垂れ流す場所ではないのです。
先に挙げた企業も売上高はピーク時の6割にまで落ち込み、昨年は各事業部合計で100人くらいのリストラを行いました。それ以前には製造部門も大リストラをし、製造部門はほとんど無人になっているといいます。
そういう状況に置かれながら、いまだに実態を知ることを拒み続けているのですから、今後も到底業績が浮上することはないでしょう。このまま縮小し続けることになります。
皆様もどうぞお気を付けください。
「敵を知り己を知れば百戦危うからず」といいますが、敵も己も知らないままでは全敗するほかないのです。