ファッション専門学校の講師をしています。
今、専門学校では2年生が就職活動真っ只中。学生たちが進路を選び出しているところになる訳だが、この時期にいつもふと考える事がある。
それは学生の夢が潰える瞬間についてだ。
ファッション専門学校に入ってくる学生の多くは、必ずと言っていいほど「自分の店を持ちたい」「自分のブランドを作りたい」という夢を持って入学してくる。それは何も悪い事じゃないし、素晴らしい夢だと思う。
問題は、その夢をあっという間に断念してしまう事だ。卒業する頃にはそんな夢を抱きながら社会に出ていく人間がどれほどいるだろう。 たった2年間の間に自分のやりたかった事を忘れ、現実を直視し、自分には無理だと諦める。
卒業生と話す機会もしばしばあるが、「そう言えばそんな事思ってましたよね~。」と言っていたり。
最初に断っておくが、インフルエンサーがよくやってる「サラリーマンディスり」をしたい訳ではない。
ただ、講師を数年やってきた人間としては、学生がやりたい事を諦め、それが単なる夢物語に変わっていく経緯を見てきていると、思う事も少なからずいくつかある。
「思考は現実化する」「諦めたらそこで試合終了ですよ」
ナポレオン・ヒルや安西先生が言っている事と共通してしまうのも恐縮だが、これは事実だ。自分に勝手に限界を作り、やりたかった事に蓋をして、「自分はこれでいい」と言い訳をする。頑張っても届かないなら初めから諦める。届かない事に頑張り続けるのは格好悪い。そんな風に考えているのだろうか。
でも考えてみてほしい。いつだって世界で成功している人間の多くは「自分が世界を変えることができる」と勘違いし続けた人間ばかりではないだろうか。実現させてしまっているから勘違いでもないのだけど。
この勘違い・思い込みの度合いが強いほど大きなエネルギーが生み出される。それは仕事でも恋でも同様だ。幸せだと思い込んだらもうその人は幸せなのと一緒だ。世界を変えた経験は無いが、勘違いがエネルギーになった経験は僕自身にもある。
少し自分の話をしてみる。僕がファッションに興味を持ち始めたのは高校3年生の夏くらい。きっと周りのファッション業界人と比較するとファッションに興味を持ち始めたタイミングはすごく遅い。それまでの僕と言えばどこにでもいる冴えないオタク風の男だった。(今現在が滅多にいないイケメンという意味では無い。)
ファッションに興味を持つきっかけとなったのは割りとよくある話だ。ある日、友人に無理やり連れて来られた古着屋で服を買い、コーディネートしてもらった。たったそれだけ。しかしそれだけで僕は言いようのない高揚感に包まれた。大げさでもなんでもなく、昨日までの景色と一変したのだ。自分に自信のなかった僕が初めて街を歩く時、人と会話する時、少しずつだけど自信を持って行動する事ができるようになった。大した事ないと思うかもしれないが、自分にとっては革新的だった。その後、大学を中退してファッション専門学校に通う事になってしまったくらいに。そして今では起業して専門学校の講師までやってるんだからどれだけ自分にとって大きい出来事だったかはおわかりだろう。
ファッションには人の生き方を変える力がある。冗談でも何でもなく、自分自身が体験した証人でもあるから。
僕の夢はファッション業界の活性化であり、ファッションを使って人々を幸せにする事。自分が体験したこの高揚感をもっとたくさんの人に感じてほしいと心から願っている。そしてこの願いは、誰もそれを望んでいないのだからほとんどエゴと言ってもいいだろう。
講師がこんな勘違い野郎なんだから、学生ももっと大いに勘違いをしてほしいと思ってる。「起業しろ!」というよくあるスタートアップ界隈のメッセージの類のものでもない。起業家だろうがサラリーマンだろうが、販売員だろうが生産管理だろうがバイヤーだろうがMDだろうが「自分はここまで行ける!」という事に限界を作らないでほしい。その勘違いがきっとあなたの大きな力になるはず。
自分の夢を語るのは恥ずかしい事では無い。一番恥ずかしいのはそういった人間を斜に構えて見てバカにする事だ。
だから明日からも是非、勘違いしながらも大いに充実した幸せな日々を送ってほしい思う。いつか来るであろう自分の大きな夢が叶う事を信じて。