AFFECTUSの新井茂晃です。
インターネットが普及するようになってから、大きく変わったことが何かといえば雑誌の存在があげられます。インターネット以前は、雑誌が新たなる興味・関心を生み出す発信源となり、情報収集の面でも大きな役割を果たしていました。けれど、現在人々は雑誌ではなくインターネットから新しい興味・関心を発見し、情報を収集しています。
そんな大きな時代の変化に伴い、休刊する雑誌が続出するようになり、現在も継続する雑誌は発行部数を以前よりも大きく減少させたというのが今ではないかと思います。そんな中で、僕がとても意識しているカルチャーマガジンがあります。今日はそのカルチャーマガジンを紹介しながら、なぜ僕が意識しているのかを自由に語ります。
ベルリン発のカルチャーマガジン「032c」
マガジンの名は「032c(ゼロ スリー ツー シー)」。数字が羅列され、アルファベットが最後に一つ添えられた一見すると意味があるのかないのか、不思議なマガジン名ですが、この名前に意味はありまして、パントーン(Pantone)のカラーコード「032c」が由来となって、マガジンのタイトルが命名されています。「032c」がどんな色かという赤です。マガジンの表紙にも赤が印象的に使われ、ウェブサイトにも赤地に白抜きのロゴが目に飛び込んできます。
創刊は2001年で、ベルリンにて誕生して年2回発行されています。メインコンテンツはファッションですが、ファッションだけでなくアート・建築といったものがテーマとして扱われ、ビジュアルも多数掲載されていますが、読み物としての魅力もあるマガジンです。
言語は英語なので、僕もそうですが英語が苦手だと読むのがかなり大変ですが、面白い視点の記事があります。僕が気に入っている記事は、こちらの記事です。
RAVE: Before Streetwear There Was Clubwear
ストリートウェア以前にクラブウェアというものがあったというテーマで、ストリートウェアの起源を辿っていくもので、ベルリンのクラブの歴史からたどり、そこでどんなファッションスタイルが着用されていたのかという、切り口に面白さがあって興味深い内容です。
「032c」を立ち上げた人物はヨルグ・コッホ(Joerg Koch)で、彼が編集長を務めています。そして、「032c」はただのマガジンではなく、ここが僕が注目する最大の理由なのですがアパレルラインがあります。アパレルラインのデザイナーを務めているのはマリア・コッホ(Maria Koch)。アパレルラインのスタートは2015年からとなります。
マリアは「ジル・サンダー(Jil Sander)」「プラダ(Prada)」「マリオス・ショワブ(Marios Shwab)」といったブランドでウィメンズデザイナーを務めたキャリアの持ち主で、「032c」のアパレルラインはアンダーグラウンドな匂い漂うストリートテイストなウェアを発表していて、人気となっています。
マガジンでありファッションブランド。それが「032c」と言えるでしょう。
ファッションを着ても、見ても、読んでも楽しめる
ファッションと言えば、着て楽しむもの、見て楽しむものというのが一般的だと思います。だからファッション誌にはビジュアルが欠かすことができず、ファッションブランドはブランドのイメージを視覚的に訴えるショーやビジュアルをとても大切にし、発表されるクリエイティブはとてもクールな魅力にあふれ、シーズン毎の楽しみにもなっています。
でも、ファッションには読む楽しみもある。ファッションの見る・読む・着るという楽しみの全てが体験できる。それを実践する「032c」は僕にとってとても気になっている存在で、僕の「AFFECTUS(アフェクトゥス)」が目指している形でもあります。
僕はファッションに潜む読む面白さが伝えたくて、現在の活動を始めました。でも、それだけで終わらず着る・見るという楽しみを体験できる「AFFECTUS」のアパレルラインを始めたいという思いをずっと持っています。
ファッションを着ても、見ても、読んでも楽しめるプロジェクト。「032c」よりも読むことに特化した形で「AFFECTUS」をそこに到達させたいと思っています。そういう未来への思いを熱くさせてくれる「032c」は、僕にとってこれからも注目の存在としてあり続けるでしょう。
最後にヨルグ・コッホとマリア・コッホのインタビューが掲載された「i-D」の記事を紹介して終わりにしたいと思います。
「海賊版はカルチャーに必要なもの」:『032c』編集長ヨルグ&マリア インタビュー
それではまた来月に。
〈了〉