三陽商会がラグジュアリーECサービスのルビー・グループを買収
三陽商会は4月27日、ラグジュアリー・ブランドに特化したファッションECのフルフィルメント(運営代行)企業のルビー・グループを買収した。三陽商会は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が保有していた株式を含むルビー・グループの発行済み株式80%を取得した。買収額は非公表。残りの20%の株式はルビー・グループ創業メンバーの桑野克己・会長兼CEO、西森雅直・社長、浅野剛史・副社長らが保有する。
最近よく低迷が報じられている三陽商会さん。決算資料でもEC強化は掲げられいましたが、まさかの展開です。買収されたルビーグループはラグジュアリーブランドのフルフィルメントを数多く手がけている企業なのでECのノウハウやそれにまつわるデータはたくさんあるのはわかりますが、これが根本的な解決にはならないんではないでしょうか。
ECの一番の目的は機会損失の回避
これは前からよく言っている事ですが、ECを始めたら需要が伸びる訳ではありません。顧客の購買行動が変化しWebでお買い物する人が増えたのは事実ですが、皆さん全く知らない商品をわざわざ探し当てそれを喜んで購入などしている訳もなく、ほとんどは知っている商品やブランドを購入しています。
「ファッション雑誌で見た」「インフルエンサーがインスタでおススメしていた」「店頭で見かけて気になっていた」などなど。行き着く理由は様々ですが、購買に至るまでには確実に認知→興味喚起が必要になります。つまり欲しいと思える商品を作らなければ意味がありません。そうして創出された需要をいかに機会損失せずにWebでもお買い物してもらうかが重要なのです。
いかにWebでお買い物してもらうかで利益が変わる?
もちろんそれだけがECの目的ではなく、ブランドを認知しているお客をWebにできるだけ誘引し、不採算店舗を閉めていく事で販管費を圧縮するという効果もあるでしょう。それが実現できれば利益率は上がる可能性があります。オンワード樫山がWebで成功しているのは上記をしっかり実践しているからです。需要自体伸びているなら年商規模が膨れ上がっていくはずですが、年商規模はどんどん下がっている模様。百貨店アパレルの課題はどこも一緒のようです。
三陽商会はバーバリーショック後に立ち上げたブランドがことごとく失敗し、年商規模は右肩下がりで下降しています。EC強化はもちろん大事な事ですが、ルビー買収が三陽商会の復活の起爆剤になるかといえばそうはならないでしょう。アパレル・小売の本質は結局過去から何も変わっておらず、顧客が欲しいと思える商品を作るに行き着きます。自社でそれが担保できないのであれば、ECの企業より企画が上手い企業やブランドを買収する方が求められるのではないでしょうか。お金はたくさんあるみたいですから、リソースがあるうちにちゃんとした手を打たないと手遅れになってしまうかもしれません。