学校経営さえ成り立てば出口はどうでもいいのだろうか?

服飾系専門学校194月入学者 大規模校は順調に確保

就職の動向がわずかだが悪化しているのが気になる。就職を希望した学生の就職率が100%だった学校が18年に比べ3校減り、79%以下が1校増えた。ほとんどの学校が高い就職率を保っているが、技術系の募集の少なさや販売職の高卒求人へのシフトなど、専門学校に進学する動機の減退に響きかねない。

服飾専門学校の入学者数の問題ですが、今年度に関しては入学者数は順調との事。しかし、数年前からファッション専門学校の入学者数は減少の一途を辿っている。

 

生徒数の減少が続くファッション専門学校

数年前の記事にはなるが、南さんの記事によると大阪では年間で1000人ちょっとしかファッション専門学校への入学者はおらず、全国でも12000人程度だと言われている。そしてこれは全盛期からすると7分の1くらいの数字なので、どれくらい縮小したかはおわかりだろう。そして一番気になった点が上記抜粋部分の就職に関する文言だ。正直な話、現場で就活を支援している身からすると、「販売系」での求人はブランドを選ばなければ困る事は無い。販売員の高卒求人へのシフトというものがあったとしても、大学・専門学校への求人も毎年潤沢にある。これが理由で就職率が下がる事は無いだろう。しかし、特に問題なのは「その先」である。

 

いつまでたっても重視されない「販売員教育」

先日、とある専門学校で面談を受けた高校生が、僕が講師を務める専門学校へ話を聞きにきた。どうやらその学校の講師は「当校に入学するな」という旨をその学生へ伝えたらしく、高校生は当校に対して否定的な先入観を持って来校していた。当校が批判される理由の一つとして「販売員教育」を重視している事が挙げられる。高い授業料を支払って、何故販売員になる必要があるのか、せっかく専門学校に来るのだから本部勤務やデザイナーなどを目指せばいいのではないか、などなど言われる事は多々ある。しかし、何度でも言うがそもそも募集がほとんど無い職種のコースなど何の役に立つと言うのだろうか。仮にその職種につけたとしても、学習した内容はその頃に実用可能なのだろうか。

 

出口を考えない事の罪

専門学校の出口、つまり就職していく人間の9割が販売員になるのだから販売員教育を重視するのは当然の事。絶対に販売員になれと言っているのではない。販売員になる確率が高いのだから、その準備を学生時代にしておく事が合理的だという判断の元でカリキュラムを導入している。そして、こういった出口を考えない姿勢は留学生の入学状況にも当てはまるのではないか。記事を読む限り、留学生の入学者数は増えているが、留学生の就職こそ非常にハードルが高い。企業によって課せられるハードルは違うが、販売員であるなら日本語レベルはN1は最低限求められるし、4大卒でなければ就労ビザを出してまで雇用してくれる企業もそれほど多くない。留学生受け入れは当校でも実施しているが、就職を視野に入れるととてもじゃないが受け入れは遠慮したくなるような状況だ。それでも留学生をどんどん受け入れる背景には、入学者数の減少が進んでいる事を学校側も理解しているのだ。

 

このように随所に学生の「出口」を考えない姿勢がファッション専門学校には垣間見られる。学校も経営なのだから致し方ないところもわかる。しかし、それでもファッション業界に身を置き、少しでもこの業界の今の状況を憂いているのであれば、現状の課題を解決する為の一手を運営側だけでなく現場の当事者レベルまでもが考えるべきではないか。真実を知らされないまま就職活動を始め、その段階で初めて求人状況を知って愕然とする学生を見るのはもう見飽きた。今年度の入学者数の数よりも、自分たちの学校が輩出した人材がどの程度業界に残っているのか、そういった意味のある数字に着目していきたいものである。

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深地雅也
About 深地雅也 155 Articles
株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。