アパレル業界の常識を変えていく

আস্সালামু আলাইকুম! (アッサラーム・アライクム!)

みなさんこんにちは!バングラデシュよりハルカがお届けします!

9月に入り、秋冬ものを身につけ始めた、そんな様子をSNSで多く拝見します。
何だかスッキリしなかった今年の春夏と比べ、心機一転、お気に入りを新調する方も多いのではないでしょうか。

どっこい。こちとらバングラデシュでは、相変わらず暑い日々が続いています。
ほぼ常夏、この国では、1年中通して同じような装いで過ごします。遣う色味が変わったりはするものの、日本のように服装を通して季節の移り変わりを感じ取ることは、あまりないのです。
アジアに出て6年目となりますが、四季のある日本の生活が恋しいと思い始めてしまった、今日この頃です。

アパレル業界の常識を変えていく

ちょっと重々しいタイトルにしてみました。

ここ最近の実体験を通して。「業界の常識を変える」ことって、実はそんなに難しくないのではないかと思うのです。

まず。アパレル業界の特徴として、川上から川下まで、関わる職種や人数が多いという点が挙げられます。
人数が増えれば増えるほど、それだけ人の思いや思惑が掛けられていく。
国を越えてビジネスをする場合は特に、文化的/宗教的背景から、考えの違いが露呈する。

そして。そんな文脈にあるこの業界の、最川上に身を置く者として。さまざまなコンテクストを持つ人が集まる場所に、そもそも「常識」なんて存在しないのではないか、そんな根本を疑う心を持って欲しいと思いつつ、皆さんに共有させて頂きます。

主に、生産側の話しではありますが、皆さんの持ち場においても活用して頂けるかと思います。いくつか、具体例と一緒に、シェアさせてください。

バングラ生産、最小ロットは1万?

アパレル生産量、世界第2位を誇るバングラデシュ。
世界の工場である中国には及びませんが、アパレル生産で国を興したといっても過言ではなく、その歴史が始まった2~30年前から現在に至るまで、世界のアパレル産業を支えています。

バングラデシュが主に得意とするのは、いわゆる「大量生産」。
1ロット(洋服1型をオーダーする際の単位)が、優に1万を超えるものです。中には、大手ブランドからのオーダーで1型100万枚を超えるものすらあり、圧倒的なオーダー枚数をこなすキャパシティーを兼ね揃えた工場も多く存在します。

そんなコンテクストの中で、「バングラ生産の最小ロットは1万」という常識は覆らないのでしょうか。答えは、否。

その常識を覆すものは何かと言うと、”工場との関係性”です。

もちろん工場側にとっては、オーダー枚数が多ければ多いほど良い。
ただ、オーダーを受注しないことには、ビジネスは始まりません。
何度も議論を重ねていく中で、工場と会社のビジネスではなく、担当者と自分とのビジネスになっていく。
議論を重ねる回数、顔を合わせる回数が増えていくほどに、関係性は濃くなっていく。

そしてそんな関係性を築く中で、「MOQ(=最小オーダー枚数)は1万枚だけど、あなたには特別に200枚でOK! 今後とも、永い関係性でやっていきましょう」ということになる場合もある。

バングラのような生産国側にとっては、オーダー発注側からのマウントがあることは、悲しいけれども目を背けてはいけない事実です。圧倒的なオーダー数量を誇るマウントA社、信頼関係を築き永いビジネスするマウントなしB社。この2社どちらを選ぶかは、工場次第ですが。

生産工場側に長期的視点を持ってもらえるような関係性を築くことで、ロット問題の常識は覆ると思います。

バングラ生産の商品、質が悪い?

お家芸が「大量生産」なだけあって、品質がそこまで重視されないという現実があります。
特に欧米系のファストファッションブランドは、製品の”検品なし”で出荷されていく場合が多いです。

縫製が完了し洋服の状態になったものは、通常であれば、1着ずつ人の目によって状態を確認され、不良箇所や問題のないもののみ出荷されて行きます。”検品なし”とは、この確認作業が全くない状態で売り場に並ぶことがある、ということです。

日本人の感覚から考えたらちょっと恐ろしいことではありますが、商品の工賃を少しでも下げるために検品作業を端折ることは、多々あるようです。

さて。品質の良さが求められないコンテクストにおいて、果たして品質を担保しようと考えるでしょうか。
もちろん、そんな悠長で良心的な考えをすることはなく、バングラ生産の商品の質が悪いと思われても仕方ない場面はあります。

ただ、果たして全ての商品の質が悪いかというと、答えは、否です。

特に日本向けの商品においては、検品作業はほぼ必ず通りますし、品質の基準に関しても欧米系ファストファッションブランドと比較すると格段に上です。

ちなみに、バングラデシュの工場にとって「日本向けの生産がある」という事実は、ある意味ステータスとなっています。
オーダー発注側へのアピールポイントとしては、日本向けの厳しい品質基準にも対応出来るという点。次回オーダーを取り易いというアドバンテージにも、繋がります。

品質は、妥協しようと思えばいくらでも妥協出来ます。基準だって、いくらでも下げられる。
不良品を内緒で輸出することだって、不可能ではないのです。

でも。そんな中で、品質基準をしっかり定めて、守る。

その状況下で出荷されている商品が沢山あるということ、ぜひ知って頂きたいです。

「バングラの商品、質が悪い」と思った際は、そのブランド名と商品を、こっそり私に教えてください!笑

大切にしたいのは、多様性という価値観

「みんな違って、みんな良い」という某詩人の有名な言葉がありますが、アパレル業界はその言葉の通りだと思っています。

生産する側も、販売する人も、そして購入してくださるお客様も。

それぞれが異なるコンテクストの中で様々な経験をしたのち、1着の服を通して繋がります。
その中で「常識」なんて言葉はそもそも当てはまらない。何事も、場合によって違い、みんな良いのだと思います。

そんな、バングラにとっては風評被害とも言える「間違って認識されている常識」を覆すためのアパレルブランド、”banesh (=バネッシュ)”。もうすぐ販売開始です。応援、よろしくお願いします!!

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飯塚はる香
About 飯塚はる香 29 Articles
“ファッションを通して世界をよりステキに”が、モットー。2013年〜日本で就職。某アパレルブランドのマネージャーとして神戸や吉祥寺などで勤務。2016年〜カンボジアへ移住。アパレル大量消費国の店頭から大量生産国の工場へと拠点を移す。2019年〜バングラデシュ在住。アパレル生産国で品質管理の仕事をしている。「国際協力×アパレル」の道で、生きていく。