基本的には国産品の重視というのは望ましい傾向だと考えていますが、今回はあえて国内の製造加工業者のダメな点を挙げていきたいと思います。
一口に「国内の製造加工業者」といっても仕事に対するスタンスはさまざまです。以前にも書いたように、すごく品質の高い商品を作る工場もありますし、粗雑な商品を作る工場もあります。日本製だから一概に品質が高いとは言えないのが実態です。
2013年ごろから円安傾向・中国の人件費の高騰などが理由となって、国内生産回帰が始まりました。日本製のブランド化とともにこの流れは定着するかと思われましたが、2016年ごろから再びアジア工場へ転出するブランドや企業が増えました。
その理由として「日本工場は使いにくい」と彼らが感じていることが挙げられます。
彼らが使いにくい理由を箇条書きにします。
1、それぞれの分野が分業体制となっており、逐一ブランド側が指示する必要がある。(例:縫製とボタンホールをかがる工場は別企業)
2、工場側とブランド側の意識が違い過ぎて共有化できない(両者ともに歩み寄りがない)
3、仕事をやり始めてから工賃の値上げを要求する
4、仕事を引き受けてから仕様変更を要求する
5、意外に下手くそな工場もある
6、納期遅れが発生することも珍しくない(正当な理由の場合もあるが、理由が不明瞭な場合も多い)
などです。
中国工場やアジアの工場もさまざまですが、これらが解消されている場合も少なくありません。ですから、「やってみたけど日本の工場は意外に使いにくかった」と言って、また生産地を中国やアジアに戻すブランドが出ています。
もちろん、工場側にも言い分はあるでしょうし、こんな体たらくではない工場も多数あることはいうまでもありません。
国内の製造加工場のほとんどは超高齢化しています。工員の最年少が50代・60代という工場はざらにあります。もっとも繊維・アパレル業界全般が高齢化しつつあるのも実情です。
そんな高齢化した工場を老経営者は、いずれ廃業・清算しようと考えています。しかし、中には2代目・3代目・4代目が継いだ工場もあります。若い経営者がもし、今後も工場を続けたいのであれば、現在ブランド側が感じている不満を解消する必要があります。そうでなければ、生産・加工は海外へ出ていくばかりになります。
国内の製造加工場の意識が変わらないのは、その昔の成功体験に基づくところが大きく、自ら発注を取りに行くのではなく待ちの姿勢であることも、かつての好況だった時代の名残です。
もし、長く工場を続けたいと考えている経営者がおられるなら、今までの意識は捨て去るべきです。生き残りたいなら自らが変わるほかありません。