先日、ある企業の展示会に伺ったところ、いつもとディスプレイの様子が違っていました。
担当者に尋ねると「あるデザイナーさんに今回は製品サンプルづくりや会場ディスプレイをお願いしました」とのことでした。
担当デザイナーが変わるとディスプレイは如実に変わります。
しばらくするとその担当者がおもむろに尋ねてきました。
「キョウイチフジタ」ってブランドをご存知ですか?
詳しくは知りませんがブランド名は知っています。2000年代前半にはよく東京コレクションにも出品していましたし、何よりもキムタク主演のかつての人気ドラマ「ビューティフルライフ」にもそのブランド名は登場したことがあります。
ビューティフルライフの最終回で、キムタク演じる美容師美容師を演じるキムタクは「キョウイチフジタ」のファッションショーにヘアメイクとして参加します。
その企業の展示スペースのディスプレイを今回担当したのが、その「キョウイチフジタ」だという。
そういえば、しばらくブランド名を耳にしていなかったなあと思っていると、どうやら、キョウイチフジタは独自ブランドをやめてしまい、デザイナーの藤田恭一氏は、企業と提携してデザイン業務を行ったり、ディスプレイの指導を行ったりしているとのことでした。
またかかわる業界もアパレルには限定せずにさまざまな業界とかかわっているとのことでした。
別の場所で会った知り合いに、「そういえば『シンイチロウアラカワ』はウェアのデザインをやめてしまい、バイクウェアのみの活動になっているよ」と教えられました。
「シンイチロウアラカワ」というデザイナーズブランドもしばらく前まで東京コレクションに出品していました。
先日、17年間愛用している「フォーバーズ」というブランドのコートを着用していたところ、そういえばそのブランドは、「リュウイチロウシマザキ」ブランドを展開していた嶋崎隆一郎というデザイナーがデザインを担当していたことを思い出しました。
もちろん「フォーバーズ」というブランドもとっくの昔に廃止されていますが、「リュウイチロウシマザキ」ブランドはどうなっているのだろうとググってみると、こちらもブランド活動は休止しており、wikiでは「嶋崎隆一郎はファッション企業のコンサルタントなどを行っている」と書かれていました。
欧米のデザイナーは、エルメスやグッチなどのビッグメゾンと契約することで一気に知名度を高め、ビジネス的にブレイクスルーすることができますが、我が国の衣料品業界にはそういうラグジュアリーなビッグブランドは存在しません。
必然的にデザイナーがブレイクスルーできるチャンスはほとんどないということになります。
コム・デ・ギャルソンがビジネス的に大成功した稀有な例ですが、それに続くにはサカイの登場まで待たねばなりませんでした。
我が国におけるデザイナーズビジネスがいかに難しいかが理解できるのではないでしょうか。
我が国のデザイナーのゴールは、企業との契約デザイナーやコンサルタントになることしかありません。
独立系デザイナーを志すファッション専門学校生はその事実をよく認識しておいてください。