メディアやアパレル業界のコンサルタントに多く見られるのですが、業績の前年対比の増減をグラフにまとめて経営分析をすることがあります。
もちろん、前年実績との対比は必要ですが、それにこだわりすぎるとかえって全体像を見失うことになります。
今年が大幅に伸びていた場合、今年の実績が良かったという以外にもう一つ考えうる原因があります。
去年の業績が悪すぎた
ということです。
例えば、昨年が一昨年の売上高の半分くらいしか売れなかったとします。
今年がんばって昨年の売上高のさらに30%増にしたとします。
そうすると、今年の実績は前年比30%増ということになり、大幅増収ということになります。
しかし、冷静に考えてみると、いくら今年の業績が伸びたと言っても、一昨年の業績には追い付いていないのです。
一昨年から比べると今年は幾分持ち直したものの、業績は低下したままということになります。
一昨年の売上高を100とすると、50%減の昨年は50です。
今年は昨年の30%増なので50×1・3ということになり、65ということになります。
昨年業績との対比で見ると、今年の業績は「好調」と言えますが、一昨年の業績と比べると「回復していない」といえます。
しかし、残念なことにアパレル業界のベテランコンサルタントもメディアの記者も昨年対比だけで「好調」とか「不調」と断定してしまいます。その結果、もっと大きな業績の流れを読み違えてしまうのです。
2015年・2016年とユニクロが既存店実績を微減させていました。
一方、しまむらやライトオンはこの2年間は好調でした。
これを見て、業界のベテランコンサルタントもメディアもこぞって「ユニクロ苦戦、しまむらライトオン好調」と書きましたし、もっとアホなメディアは「ユニクロ一人負け」とまで書きました。
どうしてそうなるかというと昨年対比実績しか見ていないからです。
しまむらとライトオンがその2年間伸びたのはそれまでずっと前年実績を下回っていたからです。
昨年が悪かったから今年が良かったのです。
ライトオンはピーク時の売上高が1000億円ありました。
好調といわれた2015年、2016年の売上高は800億円台しかありません。
いくらコンサルタントやメディアが持ち上げようと、ライトオンの状態は「ピーク時に遠く及ばない」というのが厳然たる事実なのです。
しまむらはというと、増収するためには店舗数を増やすしかなく、郊外立地は出店しつくしてしまったのです。
残る出店先は都心やファッションビル内しかありません。しかし、しまむらのローコストオペレーション体質では家賃・人件費の高い都心に出店することはかなり難しいのです。
どう見てもユニクロの方がしまむらよりもずっと有利なのです。
この手の人々を当方は「前年実績バカ」と呼んでいます。
前年実績バカはよく業界をミスリードするので、販売員のみなさんはお気を付けください。