「誰がアパレルを殺したのか?」という本が売れましたが、殺した犯人は一人ではなく複数による犯行です。
その本の中で語られなかった犯人がもう一人います。
それはメディアです。マスコミと言ってもいいのかな。
マスコミはアパレル業界についてのトピックスを報道するときに
「ユニクロVS〇〇」(〇〇にはブランド名や企業名が入る)
とか
「第二のユニクロ」
と
報道します。
彼らの基準はすべて「ユニクロ」なのです。
例えば、ストライプインターナショナルは「第二のユニクロ」と報道されることがあります。
しかし、ストライプインターナショナルは「ユニクロ」を目指していたのでしょうか?
恐らくこれっぽっちも目指していないと思います。
まず、ユニクロとストライプの各ブランドではブランドの設計思想が異なります。
ユニクロは「高品質・低価格」で、「どんなブランドとも合わせられるようなパーツ」が設計思想です。
ストライプのブランドはどうでしょうか?パーツを目指しているのでしょうか?
商品は高品質でしょうか?
ファミリーに向けたユニクロと、女性向けしか発売していなストライプ。
共通項は低価格という1点のみです。
これで「第二のユニクロ」なんて報道してしまうのですから、完全にミスリードを誘っています。
メディア側の理由もわからなくはありません。
もっとも著名なブランドであるユニクロを持ち出した方が、ド素人にも想像しやすいからです。
しかし、想像しやすいとはいえ、「第二のユニクロ」という報道を多発することで消費者をミスリードしてしまっていることも事実です。
そして、業界の大手企業の経営者もミスリードされているのです。
ユニクロのフリースブームだった1998年ごろ、フランドルのイネドオムというブランドが2900円でフリースジャケットを発売しました。
完全にユニクロに追随していたといえます。
しかし、当時のイネドオムの顧客層はユニクロと同じでしょうか?
価格帯はユニクロと同じでしょうか?
まったく異なります。その結果、イネドオムは現在に至るまで苦戦しています。
オンワード樫山の人が、某生地工場に「ユニクロでバカ売れしたあの商品と同じ生地を売ってくれ」と飛び込んできたことがあったそうです。
しかし、オンワード樫山の商品のデザインはユニクロと同じでしょうか?
異なるデザインなら同じ素材を使っても同じだけ売れることはありません。
極端な言い方をすれば、ユニクロがスキニージーンズを作った生地で、オンワード樫山がワイドパンツを作ったところで同じ売れ行きになることはあり得ないのです。
お分かりでしょうか?
しかも値段帯も異なります。オンワード樫山が2990円とか3990円で発売するはずがなく、少なくとも1万円くらいの価格になります。
それだけの値段差があってユニクロと同等に売れるはずがありません。
これらの珍現象も、当事者たちは大真面目にやらかしているのです。
こうした珍現象は、マスコミの「ユニクロ~」という報道によって誘発されている要素もあるといえます。
アパレルを殺した犯人の一人は間違いなくマスコミでありメディアなのです。