戦略的なユニクロと、戦略なき戦術に終始するファッションアパレル

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 こんにちは南です。
少し以前にこのトップセラーブログで、『「ユニクロ」と「それ以外」のファッション業界』という記事が掲載されました。

「ユニクロ」と「それ以外」のファッション業界。

その傾向はますます強まっているように感じます。そしてユニクロとそれ以外の格差は確実に広がっています。

10月末にユニクロを展開するファーストリテイリングと島精機製作所は合弁会社を設立しました。島精機製作所とはニット編み機を製造する機械メーカーで、無縫製でセーターを編めるホールガーメント機を作ることができる唯一の会社です。

この会社と合弁会社を作ったということは近い将来、ユニクロやジーユーにホールガーメント機で編まれた無縫製のセーター類が入荷するということになります。

無縫製のセーターが消費者にもたらす直接のメリットはほとんどありません。
よく「無縫製だから縫い目がなくて着心地が良い」と説明しているブランドやショップがありますが、ほとんど詐欺に等しい説明だとぼくは思います。

一方、生産者側にはメリットが大きく、無縫製でセーターが編めるということは縫製工員が不要になるということです。
衣料品の製造工程にはいまだに人力に頼っている部分も多く、とくに縫製はその一つでもあります。
ところが、日本はもとより、最近では経済成長した中国でも縫製工員が集まりにくくなっています。理由はあまり儲からないからです。
ホールガーメント機が大量に使われるようになると、セーター類だけとはいえ、縫製工員が不要になります。
縫製工員不足の一端が解消されることになり、生産者は大きなメリットを得られます。

また11月中旬に、ファーストリテイリングは米国のロスアンゼルスにデニム専門の研究・開発施設を開設しました。
どのような研究・開発が行われるのかはわかりませんが、デニム生地やジーンズについて様々な研究・開発がなされると考えられます。

ファーストリテイリングはこのように製品の研究・開発と、生産工程のさらに深い部分で再構築を目指して取り組んでいます。

他方、「ユニクロはファッションじゃない」とうそぶいていた百貨店やファッションビル、それに付随していたファッションアパレル各社はどうでしょうか?彼らがこのようなことに取り組んだとは聞いたことがありません。
どちらが真摯に物作りに取り組んでいるといえるでしょうか?

合繊メーカーや、ワコールやグンゼなどの肌着メーカー、アシックスやミズノなどのスポーツウェアメーカーはそれぞれ研究施設を持っていますが、ファッションアパレルでそういう施設を持っているのを聞いたことがありません。

今秋は「最悪を通り越して異次元レベルの悪さ」だといわれる商況ですが、いまだに百貨店もファッションアパレルも「〇〇系がトレンドに浮上するからそれ向けの商品を強化する」とか「アクセントカラーに赤を加えよう」とかそんな小手先の対応だけで何とかなると思っています。

戦略的な構築を目指すファーストリテイリングに対して、戦略を持たず目先の戦術的対応に終始するファッションアパレル各社。

戦争に例えるならファッションアパレルのやっていることは局地戦、しかもごくごく小さな局地戦にすぎません。
そんな局地戦で100枚売れようが500枚売れようが、大勢に影響はありません。逆に局地戦にいくら勝とうが、戦争そのものには負けることも珍しくありません。

司馬遼太郎の小説で有名な「項羽と劉邦」ですが、局地戦で無敗を誇った項羽は、戦略的に包囲網を構築した劉邦に敗北します。
局地戦に連戦連勝してもまったく無意味だという好例です。

世界的な戦略を構築し続けるファーストリテイリングと、戦略なき戦術で局地戦を戦い続けて疲弊するファッションアパレル。これが今の業界の情勢です。

今後、ますます、ファーストリテイリングとそれ以外の格差は広がり、ニッチ的な強さを持つブランド、ショップのほかのそれ以外は軒並み絶滅に追い込まれてしまうでしょう。

みなさま、どうぞお気を付けください。

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南 充浩
About 南 充浩 63 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿

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