低価格店にはあって高額店にはない「安心感」

洋服店で「不便だなあ」と感じることがあります。

それは「値札」が見えにくいことです。老眼だからではありません。47歳を目前にしていますが、幸いにしていまだに老眼は発症していません。

そうではなく、値札がたいていの場合、服の内側に差し込まれているのです。

あれは一目で値段がわかりませんし、値札を探すためには吊られている服の中に手を入れてゴソゴソと探さなくてはなりません。

そんな不審な挙動をしていると当然、販売員さんに声をかけられてしまいます。

お店やブランド側からすると、値札を隠すという行為はそれなりに正当な理由付けがあるのでしょうが、消費者としては不便なことこの上なく感じてしまいます。

値札を隠す理由は

1、洋服のディスプレイとして綺麗に見せるため

2、値札を探しているお客に声がかけやすくなるため

おもなものはこの2点ではないかと推測します。

それでも消費者としては、値段が一目瞭然でわかるようにしておいてもらいたいのです。

低価格なショップでは値札が見えなくてもPOPが多数貼られていて値段がわかりやすくなっています。万が一に値段をわからないままに買ったとしてもおそらく驚くほどの価格ではないでしょう。

しかし、値札を隠している店は、百貨店も含めて高額店ばかりです。

1枚990円なんていう商品はそこには存在しません。間違ってレジに持って行ってびっくり仰天なんてことがあるかもしれません。

ですから、一消費者とすると、百貨店も含めた高級ショップには「怖くて」足が向かないのです。

飲食店で例えるなら、「時価」と書かれた回らないお寿司屋くらい恐ろしい場所なのです。これが、百貨店離れ・高級ブティック離れの原因の一つになってるのではないでしょうか。

低価格店は値段がわかりやすいうえに、値段がわからないままにレジに持って行っても「そんなに高くはないだろう」という「安心感」があります。

一方、百貨店や高級ブティック、ブランドショップにはその「安心感」がありません。

もちろん、商品のキャンセルもできますし、返品もできますから、実際にはそれほど不都合な事態が起きることは考えられませんが、それでもそんなトラブルは消費者としては避けたいと思うことも不思議ではありません。

低価格店の方がかえって安心感があるという状態を放置しておくのはどうなのでしょうか?

今までのやり方で高価な洋服が売れにくくなっているのなら、やり方を変えてみる必要があるのではないでしょうか?旧来のやり方にしがみついたままで「売れない」と嘆いてばかりいることは、まったく何の効果も生まない非合理的な行動ですから。

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】