先日から報道されていますが、全百貨店の売上高が36年ぶりに6兆円を割り込み、5兆円台となりました。
百貨店という小売業の衰退は一目瞭然といえます。1980年当時の規模にまで縮小してしまったということです。主な原因は衣料品の不振ですが、それ以外にもインバウンド客の単価減少、食品の落ち込みなども挙げられており、好調・堅調を維持できたのは2・0%増の化粧品を含む雑貨だけだったそうです。
インバウンド客は客数は伸びていますが、売上高が減少しており、大幅な単価減であることがわかります。実際にバッタ屋(在庫処分店)の店頭に立っていると、外国人観光客はそれほど気前が良いとは感じません。かなり価格にはシビアです。
一時期は持ち上げられていた「デパ地下」の食品が減少に転じた理由はちょっとよくわかりません。
愛好者は多いけれど、日常的に購入する物ではないということでしょうか?
それに加えて店舗数の減少も大きく影響しています。都心の大型旗艦店は別として地方店は閉店、倒産、売り場縮小が続いています。店舗数が減ればそれだけ売上高も減少しますので、百貨店売上高は必然的に減少します。昨年後半にも阪急阪神や三越伊勢丹、そごう西武の地方店の閉店が発表されていますので、今後、百貨店店舗数はさらに減少するのは確実です。
先日、あるメーカーと話したところ、「消費者はモノを欲しがっていないことを痛切に感じるようになった」といいます。得意先にも苦戦に転じたところが多いそうです。
しかし、モノが売れないわけではありません。例えば、このメーカーだと、圧倒的な売れ行きを見せる先もあるのです。2万円の商品がたった1日で300個完売したこともありますし、別のメーカーだと12月の1カ月間だけで1000個販売した商品もあります。
ただ、今までのように「モノをきれいに並べて売っている」だけでは売れなくなったということでしょう。
何か独特の世界観だとか、付加価値だとか、そういうものが合わさると爆発的に売れるのです。単に「モノをきれいに並べて売っている」だけの百貨店は消費者からすると「買場」ではなくなっているといえます。
百貨店は今後、地方の中小型店の閉鎖・撤退が相次ぐでしょう。
なぜなら、存在価値がほとんどないからです。店舗面積が小さいということは商品の陳列量が少ないということにつながります。一方、地方や郊外には巨大なショッピングモールが次々とオープンしています。いずれこのショッピングモールも飽和状態に達して、不採算店は閉鎖に追い込まれるでしょうが、それはもう少し先のことになるでしょう。
商品の陳列量では地方の中小型百貨店はショッピングモールに太刀打ちできません。圧倒的に負けています。
一方、電車で1時間以内に都心に着ける郊外だと、都心の大型旗艦百貨店に客を奪われます。例えば、八尾西武で買うくらいなら近鉄電車で20分ほどの距離にある難波の高島屋に行った方が、品ぞろえは圧倒的に豊富です。
郊外型ショッピングモールと、都心の大型旗艦百貨店に挟まれて地方の中小型百貨店は近い将来ほとんどがなくなってしまうと個人的に見ています。
衣料品に特化しすぎた現在の百貨店という販売形態は、もはや消費者ニーズからは完全に取り残されてしまっているのではないでしょうか。
そんなわけで、百貨店という業態が劇的に売上高を回復させることはありえないでしょう。