こんにちは、南です。
今日はコアな読者ではなく、ちょっとライトな読者に向けて書きます。ですので、コアな方は読み飛ばしてくださいネ。
先日、こんなツイートを見かけました。ジーユーからベロアパンツ1990円入荷のお知らせメールが来たのですが、
「109ブランドよりジーユーのベロアパンツの方が素材も良くて値段も安い」
という内容です。
2005年ごろまではまだ「安かろう=悪かろう」という構図がギリギリで成り立っていましたが、現在ではその構図はほぼ成り立たなくなっています。
おそらく、ジーユーのベロアパンツの方が109ブランドよりも素材が良くて価格が安いのは事実だと思います。
なぜなら生産数量が圧倒的に違うからです。ジーユーの生産数量は少なく見積もっても10万枚前後はあるでしょう。ジーユーは現在340店くらいあります。1店舗あたり平均100枚の商品を配布するとそれだけで34000枚製造できることになります。300枚ずつ全店に配布すると10万枚を越えます。ジーユーの現在の売れ行きを見ていれば各店舗で300枚くらいは販売できるのではないでしょうか。
一方、109系ブランドの生産数量はどうでしょうか?1ブランドあたり100枚くらいでしょう。多くても1000枚とか1万枚。とてもじゃないですが10万枚なんて生産できません。在庫過剰で一瞬で経営破綻しますから。
仮に1000枚生産しても今の業界では「そこそこのヒット商品」といわれます。1000枚生産だと100分の1の数量にすぎません。当然、縫製工賃、生地値ともにジーユーより高くなります。
既製服は工業製品です。家電も自動車もパソコンもスマホも同様に工業製品です。工業製品は製造数量が多ければ多いほど1個当たりの製造費は安くなります。そしてそれによって店頭販売価格も安くなります。
13年くらい前までは、まだファッションビルブランドも百貨店ブランドも製造枚数が今よりは多かったのです。過剰在庫を嫌ったことと、洋服の販売不振によって年々製造枚数を減らしていったのです。
一方、ユニクロは「数の論理」を忠実に守って売り上げ拡大に比例して生産数量を増やしてきました。ジーユーはユニクロよりもトレンド寄りですが、基本的な考え方は同じです。ジーユーのガウチョパンツが100万本売れたことはまだ記憶に新しいと思います。
ユニクロはそれこそ100万枚くらいの数量を作りこんで売り減らす手法ですが、ジーユーはそこまでの数量は作りませんが、並のファッションビルブランドよりははるかにたくさんの枚数を製造します。
ユニクロがブームになったのは90年代後半です。
このころ、ユニクロの商品はそれほど良くありませんでした。見た目もモサっとしていましたし、素材も色・柄もそれほどではなく安物臭が漂っていました。
これはアジア工場の技術水準が低かったためでしょう。
一方のファッションビルブランドや百貨店ブランドの商品はやはり見た目も生地も良かったです。ある製造業者にいわせると2000年ごろまでのクオリティの商品は現在の店頭では売られていないとのことです。
またこのころのファッションビルブランド、百貨店ブランドはまだ生産ロットがそれなりに大きかったのです。おそらく普通に1000枚くらいは作っていたでしょう。だから品質も維持できていたのです。
ところが2005年以降急速にアパレル不振が目立ち始めます。2008年のリーマンショックだけが原因ではありません。リーマンショックだけが原因だと思っているならその人はアホです。
どんどんとファッションビルブランド、百貨店ブランドの製造枚数が減っていきました。売れないから減らすのです。今では1型100枚作れば「多いな」と言われるほど、製造枚数は激減しています。
その結果、商品のクオリティはどんどん下がります。一方のユニクロ、ジーユーは売り上げ拡大に伴ってどんどん生産枚数が増えていますし、アジア地区の工場の技術水準も上昇していますから、商品クオリティは格段に向上しています。
ですから、現在はよほどの高額ブランドでないと、ファッションビルブランド・百貨店ブランドはユニクロより商品クオリティが低いという逆転現象が起きています。さすがにジーユーよりは百貨店ブランドはクオリティが高いでしょうが、ファッションビルブランドになると怪しいのがかなりあります。
洋服とは生地や縫製仕様の良し悪しだけで価値が決まるものではありませんが、生地や縫製仕様という観点で戦えばユニクロはおろかジーユーにすら勝てないという状況に陥りつつあるのが実情です。
洋服屋は盛んに「品質ガー」といいますが、その品質ではユニクロどころかジーユーにすら追い越されつつあるのです。
ということは「品質」ではない何かほかの物を売らなくては勝ち目がないということです。
あなたならどんな価値を提供しますか?今、それが問われています。