繊維・アパレル業界はこれまで、その時々の話題の手法にあまり深く考えずに乗っかる業者が多くいました。そしてその傾向は今も変わりません。
ユニクロブームが来れば、右へならえで低価格化に走りました。ワールドが好調なときにはクイックレスポンス体制とSPA化にならいました。
2010年頃からはインターネット通販がすべての問題を解決する切り札かのように称え、去年あたりからはクラウドファンディングをすれば売れるという間違った認識を持つに至りました。
先日、当方よりも15歳くらい年上の知り合いが、「産地の〇〇さんからクラウドファンディングを勧められた」と言ってきました。
たしかにクラウドファンディングにチャレンジすること自体は悪いことではありませんが、必ず売れるというわけではありません。
現にキャンプファイヤーを見てみれば、全然資金が集まらずに終了している繊維製品は数多くあります。
クラウドファンディングで成功するにはどれだけネット上でファンを持っているか、どれだけネット上で情報を拡散できるか、が大きな要因となります。
しかし、この知り合いはクラウドファンディングどころか、Eメールすら送れないほどウェブ知識がまるでゼロなのです。こんな人がクラウドファンディングをやったところで成功するはずもありません。
最終的にこの知り合いはクラウドファンディングには挑戦しなかったので、さすがに賢明だったといえます。
しかし、問題はこの人にクラウドファンディングを勧めた産地の人たちです。この産地の人たちだってウェブ検索やEメール送信くらいはできますが、ウェブ上にファンを多数持っているわけでもありませんし、ウェブ上での情報発信力があるわけでもありません。
当方の年配の知り合いとウェブリテラシーの低さは似たり寄ったりなのです。
そういう人たちが安易に「インターネット通販をすれば売れるらしい」とか「クラウドファンディングをすれば売れるらしい」とか考えて、実行してしまうところが、これまでの繊維・アパレル業界の体質を如実に表しているといえます。
これまでの「流行り物ツール」は見様見真似でやってみてもそれなりに成功したのかもしれませんが、ウェブに関していえば、知識ゼロのままでいくら外見だけ「インターネット通販」や「クラウドファンディング」を真似たところでまったく売れません。
形や体裁を整えれば何とかなった過去の流行り物ツールとは全く性質が異なるのがウェブです。
そして、繊維・アパレル業界の情報弱者は今後もこういう情報に踊らされ続けて疲弊していくことになってしまうと考えられます。