三越伊勢丹がデジタルで描く未来図は? 「シェアリング事業は絶対外せない」
三越伊勢丹ホールディングス(HD)は2019年3月期中期決算発表に合わせて、事業戦略を発表した。グループとして今後目指す姿を、“IT・店舗・人の力を活用した新時代のプラットフォーマーとしての百貨店”と定義し、引き続きデジタル分野を強化。ポイントは、社内に大規模な撮影スタジオを設けてのEC拡大、アプリを活用したオンラインとオフラインでの境のない接客の実施、収集した顧客のデジタルデータを基盤にした7つの新事業という3点だ。
少し前の記事にはなりますが、社長の交代劇から施策が大幅に変わった三越伊勢丹。販管費圧縮により決算がやや上向きの様子ですがさらに新しい事業戦略として、
・EC強化
・アプリを活用した接客
・顧客データを起用した新事業(パーソナルスタイリング、統合コスメ、定期宅配、カスタムオーダー、eギフト、オンラインSPA、シェアリング)
を掲げています。ツッコミどころはたくさんあるのですが、一番気になった「EC強化」についてピックアップしたいと思います。
消化仕入れのままECを強化?
これ、何度も言ってますが改めて。百貨店は基本的にはブランド側との契約は消化仕入れという形態です。つまり売れた分だけを百貨店側が仕入れるという在庫リスクを取らない方式ですね。しかも販売員もブランド側の社員。つまりこの発表は、
「在庫リスクは取らないけど、EC強化するからその分の商品もちゃんとブランド側が担保してね」
ていう事です。これがまだZOZOやAmazonのように、自社がリーチできない顧客を持っていたり、売上がすぐ上がったり、代わりに集客してくれたりって内容なんであればそれもまだわかります。しかし、いつも言っておりますように国内の百貨店のECは商品はスカスカだしコンテンツも不十分。サイトに回遊しているのはほとんどが店頭情報を入手する目的のユーザーばかりでしょう。
どのタイミングで撮影するの?
そして、店頭にある在庫をどう全て掲載するんでしょうか。もし仮に店頭にある在庫を全て撮影するなら、百貨店に入荷したタイミングで全て撮影してそれを店頭に引き渡すという流れでしょうか。ブランドによって入荷のタイミングがかぶったりした場合、店頭に商品を引き渡すタイミングが大幅に遅れると店頭からクレームきそうなものですが。店頭に商品が渡ったら、撮影の為に商品引かせてくれとお願いするんでしょうか。それこそ店頭スタッフが黙っていないでしょう。
それ以外にも在庫連携や客注対応などなど、クリアしないといけない問題は山ほどあります。そもそもブランド側がECを強化するのって自前の販路を確立して、プラットフォーマーに対する交渉力を担保する事にあります。店頭ならまだしも、力の無い百貨店のECというプラットフォーム(と呼んでいいのか?)に出店する合理性が全く無いのです。まずは自前の在庫である自主編集売り場(それも委託商品多いんだろうけど…)から手をつけ、売上が伸びてきたらどんどん参加ブランドを増やすって方向性でいいのではないかと思うのですが…。