三つ子の魂百までと古くからいわれます。
人間はどうしても自分が育ってきた環境を引きずってしまいます。これは社会人になっても同じで、最初に属した会社やブランド、長らくいた会社やブランドの影響を少なからず受けて、そのまま老人になっていきます。
アダストリアのグローバルワークが1年半くらい前から苦戦に陥り、直近から再び回復に転じています。
その理由ですが、店頭を見ている限り、苦戦に陥った理由は明らかです。そのときに行ったブランドリニューアルが失敗だったからです。
グローバルワークは、元々、アメカジをベースとしたファミリーブランドで、おもに30代の若い夫婦に支持されていました。
ユニクロと一部重なるテイストですが、ユニクロにはないデザインとユニクロよりも少しだけ高い価格が若い夫婦に支持されてきました。
ユニクロだけでは物足りないという層にはピッタリだったわけです。
当初の店内は木目調のナチュラルなテイストでした。
これが、リニューアルされ、商品は20代男女向けに若返り、店内は白を基調としたモダンなテイストになってしまいました。
ファミリー向けのままだと言っても、これでは既存客は離れてしまいます。
これがグローバルワークの苦戦の大きな要因の一つになったといえます。
何か月か前から好調に転じましたが、これも理由は明白で、店内の内装はそのままですが、商品テイストを再び30代の夫婦に戻したからです。また子供服も強化されました。
おそらく、離れた既存夫婦客が戻ってきたのでしょう。
外野から見ていればグローバルワークの根幹は30代ファミリー客であることは火を見るよりも明らかなのにどうして、無理やりに若返らせたのか不思議でなりません。
これに対して某大手企業の経営者は当方にこう説明しました。
「アダストリアはジーンズショップ『ポイント』が前身で、ジーンズショップは常に若い人にターゲットを合わせる習性が根付いている。だからポイントで育った人はどうしても若い人向けにしたがるのではないか」
とのことでした。
これには納得するしかありません。
まさしく「三つ子の魂百まで」といえます。
今回はグローバルワークを例に出しましたが、こういう例はアパレル業界には掃いて捨てるほどあります。
多くのブランドの施策が失敗に終わる原因の一つに「三つ子の魂百まで」があります。
若い頃に成功したブランドのやり方を30年後もそのまま取り入れていたり、自分が若い頃のトレンドをいまだに強引に展開してみたり、そういうブランドやショップは本当に珍しくありません。
しかし、今の消費傾向や今のトレンドを虚心坦懐に見つめなおし、場合によっては慣れ親しんできた「三つ子の魂」を捨て去ることこそ重要でははいでしょうか。