今こそリアル店舗の強化を考える時代に

アパレル業界の経営者は極端に流行り物に弱いので、ネット通販に過剰に注目していますが、個人的には、もうネット通販で頭角を現すのは小規模企業には難しい時代に突入したと感じています。

もちろん一人でやってて年商1億円とか5人で3億円とかそういう小規模な企業・ブランドはまだまだ生まれるでしょうが、小規模ブランド・企業がビッグにバケることは難しいのではないかと思います。

ある小規模メーカーが、新ブランドを作って、それでネット通販を始めようとしていると聞いています。で、自社サイトを立ち上げつつ、ZOZOに出店するという方向性だったのですが、ネットに詳しくない社長が自社サイトの構築に及び腰になり始めました。

なぜなら、自社サイトの構築には少なくとも何十万円かかかるからです。

そんな知名度の低い新ブランドの自社サイトでは当面は売上高はほとんど見込めませんから、社長からするとカネが無駄だということになるのでしょう。

この業界のオッサンは「酒を飲むこと」以外の「見えない物」に対する投資を極端に嫌いますから。(笑)

ZOZOだと、ZOZOが集客してくれるので無名の新ブランドでも何万円かは売れる可能性があります。目先の利益だけを考えるとこちらの方がコスパが高いのです。

しかし、ZOZO店だけだと顧客リストは永遠に自社に貯まりません。なぜなら、顧客リストはZOZOが管理しているからです。そうなると何十年も出店し続けたとしても顧客リストはゼロのままなのです。

物を売るときにもっとも大切な物の一つに顧客リストがあります。

これがないままでブランド活動を続けて行かなくてはならなくなるので、自社サイトをやらないということは愚劣でしかありません。

もともと、ネット通販というのは「少ない投資でできる」ことが魅力でしたが、ネット通販の乱立によって、それは難しくなっており、自社サイトと大型モールへの出店、この2つを同時にやらなくてはならなくなっています。当然費用も人件費もそれだけかかります。

ネット通販はすでに「小資本でできるビジネス」ではなくなっているのです。

アパログで

ECは儲からないビジネスになった

https://blog.apparel-web.com/theme/consultant/author/kojima/4c12a723-4f61-45e4-9aa5-9d200f0c25f5

という記事が掲載されています。

これは商品の配送料の値上がりが各社の利益を圧迫しているという内容ですが、その理由はネット通販の需要と供給が増え続けているからです。

いわば配送量が増えたために今までの料金体系では、人手も確保できなくなっているのです。

ネット通販はすでにレッドオーシャン化しており、今後ますます大資本に集約されると考えられます。

長々と書いてきましたが、こういうご時世だからこそ、リアル店舗に価値が出てくるのです。みんなが注目したころにはそこはレッドオーシャンになっているのです。今は逆張りで勝てる時期です。逆張りでリアル店舗強化を考えるべき時代が始まっているといえます。

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】