洋服の在庫がダブついており、廃棄が問題になっていますが、「廃棄はケシカラン」と息巻いておられる方々は、アパレル企業は平均でどれくらいの不良在庫を抱えているかご存じでしょうか。
アパレル企業の売上高の10%くらいが平均的な不良在庫だと言われています。
売上高2000億円のアパレルなら、200億円くらいの不良在庫があることが平均的だといえます。
少し前にバーバリーが不良在庫を廃棄しているという報道がありました。廃棄したのは42億円分だそうです。
昨年からかなり親しくさせていただいている河合拓さんという有名なコンサルタントがおられますが、彼がアップした動画では、こんなことを述べています。
「少し前にバーバリーの在庫問題でテレビ番組からコメントを求められ、最初、42億円分の在庫っていうから、てっきり『バーバリーは優秀だ』という話かと思いました。(笑)」
と。
どうしてこういうことになるかというと、バーバリーの年間売上高は全世界で約4000億円です。ですから、不良在庫は400億円分くらいあっても不思議ではないのです。平均だと400億円ある不良在庫がたったの42億円なのですから、「極めて優秀」ということになります。
また、別の報道ではバーバリーは5年間に130億円分の在庫を廃棄していたと伝えられていますが、これもバーバリーの「優秀」さを証明しているといえます。
5年間で130億円ということは、1年平均だと26億円ということになります。
当然、それより多い年、少ない年があったでしょうが、26億円前後に抑えられていたというなら、これまた「極めて優秀」ということになります。
H&Mの在庫廃棄も槍玉に挙がったことがありますが、H&Mの売上高は2兆円以上ありますから、平均で考えるなら2000数百億円分くらいは不良在庫があってもおかしくありません。
売れ残りはなるべく出さないにこしたことはありませんが、完全にゼロにはできません。
もし完全にゼロにしたいのなら、完全受注生産システムを取るほかないでしょう。
それでもB品やサンプル修正品なんかは不良在庫になるでしょう。
小規模ブランドでは「完全受注生産」を見かけることがありますが、そこそこの規模のブランドでは見かけた記憶がありません。
しかし、他業界で見てみれば、ガンダムのプラモデルには「完全受注生産システム」があります。
「プレミアムバンダイ」というサイト、通称「プレバン」です。
ここでは、一般販売されないようなマイナーな機体や色違いの機体を、完全受注生産しています。しかもどんなに高い商品でも送料は一律で600円以上取られます。
販売に先立って、欲しい人は予約受注します。生産予定数に達した時点で締め切りとなります。人気商品だと即日完売も珍しくありません。
配送は、だいたい締め切りから1か月以上後になります。
好評な商品なら「第二次募集」「第三次募集」があります。
ガンプラファンはこれをかなりの比率で申し込んで予約購入しています。かく言う当方も昨年に初めてプレバンで予約購買して以来、かれこれ5個くらい買ってしまっています。
こういうやり方を洋服業界では導入できないでしょうか。もちろん、ガンダムのプラモデルとそのまま同じやり方にはできないことは重々承知しています。それでもそのエッセンスは導入できるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。