ファッション界を先導してきたストリート

初めまして。AFFECTUS(アフェクトゥス)の新井茂晃です。

今月から僕の書いた記事が毎月第4週の水曜日に、ここTopSellerで掲載されることになりました。本日は初回でもあるので、簡単な自己紹介を。

2016年から「ファッションを読む」をコンセプトに、ファッションデザインの言語化を試みるプロジェクト「AFFECTUS」をスタート。TwitterやInstagram、noteなどインターネット上にモードファッションを考察する文章の発表を始め、2017年1月からはそれらの文章を一冊にまとめたAFFECTUSのブック版を自主出版で販売し、代官山蔦屋書店や下北沢本屋B&B、鹿児島OWLといったお店でも扱っていただけるようになりました。昨年はCAMPFIREでクラウドファンディングを実施し、最新号の出版を実現させることができ、以降も最新号の自主出版を続けています。

今週21日(月)には、文藝春秋のニュースサイト「文春オンライン」に僕の書いた記事が掲載されました。

日本ブランド「マメ」の可能性 パリコレでの日本の立ち位置とは?

今年に入ってからはメディアへの寄稿、代官山蔦屋書店でトークイベントを開催するなど新しい活動も行い、言葉でこそ伝わるファッションの面白さを発信し続けてます。僕はファッションを言葉で表現することを大切なテーマとしていて、ブック版AFFECTUSには写真は一枚も登場させず、文章のみでファッションの魅力を伝えています。それはInstagramでも同様です。

Instagramといえば写真。けれど、AFFECTUS Instagramアカウントでは写真を一枚を使わず、通常投稿では文章のみの投稿を行なっています。言葉でこそ伝わるファッションの面白さがある。その姿勢でファッションを言葉にしています。

毎月1度、「ファッションを読む」体験をお届けしたいと思います。

ファッションはストリートからエレガンスへ

初回となる今日は、モードファッションのトレンドがテーマ。これまで世界のファッション界を席巻してきたのは、ストリートウェアでした。ビッグシルエット、ロゴ入りTシャツ、グラフィックデザイン。街を見渡せば、人々の服にはストリートウェアから派生したデザインが波及していました。

しかし、その流れに今、変化が現れ始めています。ストリートからエレガンスへと。スウェットからシャツへ、フーディからジャケットへ。これまでグラフィックデザインを中心に、装飾性高いカジュアルウェアが支配していたトレンドに、久しぶりにジャケットがキーアイテムに浮上するなど、シンプルで綺麗なスタイルを軸にした美しく装ったファッションが、モードの最前線へと躍り出てきました。

このままストリートは下火になっていくのか。いや、そう断言するにはまだ早いでしょう。それを証明するように、ルイ ヴィトンやクリスチャン ディオールを傘下にする世界最大のファッションコングロマリットLVMHグループは、2017年創業のロサンゼルスを拠点にするストリートブランド「マッドハッピー(Madhappy)」へ150万ドル(約1億6,300万円)出資したことが明らかになりました。

ストリートからエレガンスへと言われ、スーツスタイルを発表するブランドも増えていますが、よく観察するとそのスーツは従来のきっちりとしたイメージの着こなしではなく、シルエットにルーズさが入り込んだカジュアルなストリートの匂いが感じられます。

現代の空気を捉えたスーツをうまく発表したのは、コム デ ギャルソンで自身のラインを任されていた丸龍文人が、2019年春夏シーズンにローンチした「フミト ガンリュウ(Fumito Ganryu)」

ギャルソン在籍時、丸龍氏のデザインはストリートスタイルでした。ギャルソン退社後、新たに立ち上げたフミト ガンリュウもデビューコレクションの2019年春夏はストリート色が強かったです。しかし、それが翌シーズン2019年秋冬になると大きな変化が起こりました。

スーツが登場したのです。この変化に僕はとても驚きました。

「ガンリュウがスーツ?」

しかし、スーツとはいってもそれはスーツではありませんでした。ストリートのDNAであるルーズシルエットで作られたスーツがそこにはあったのです。

スーツでありながら、受ける印象はカジュアルなストリートウェア。モードの文脈を捉えながらストリートと融合させた、次の時代に向けた新しいスタイルを丸龍氏は発表しました。

ファッションと社会

今やストリートウェアは一過性のものではなく、アメリカントラッドのようにファッションスタイルの一つとして市場に確立されました。現在の隆盛が今後も続くことはないでしょうが、普遍化したファッションスタイルとして、これからも市場で存在感を放っていくだろうと僕は考えています。

現代はカジュアルが全盛の時代です。世界の中心と言えるAppleやGoogleといったテックカンパニーはカジュアルな服装で新しいビジネスを生み出し、世界を変えてきました。日本でも、三井住友銀行が本店でTシャツとジーンズ姿での出勤(夏季限定)を許可するようになるほど、社会における服装のカジュアル化は衰えるどころか、ますます進行しています。

ファッションは社会の変化と密接しています。そのことは歴史も証明しています。フランス革命に明治維新。新しいビジョンと共に時代が大きく変わる時、人々の新しいファッションが新しい時代の象徴となる。現代ではインターネットがビジネスを変え、世界を変えてきた。スーツから、Tシャツとジーンズへと。

考え方が変われば、行動が変わる。行動が変われば、服装は変わる。服装が変われば、街の景色は変わり、世界は新しくなる。

ファッションが変わる時、時代は動く。

それではまた来月。

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新井茂晃
About 新井茂晃 16 Articles
1978 年神奈川県生まれ。 2016 年「ファッションを読む」をコンセプ トにファッションデザインの言語化を試みるプロジェクト「AFFECTUS(アフェクトゥス)」をスタート。 Instagramとnoteで発表しているテキストを一冊にしたAFFECTUS BOOKは、AFFECTUS ONLINE SHOP・代官山蔦屋書店・下北沢本屋B&B・鹿児島OWLで販売中。2019年からはカルチャーマガジン『STUDIO VOICE』、ニュースサイト『文春オンライン』への寄稿、代官山蔦屋書店でのトークイベント『AFFECTUS TALK』を開催するなど新しい活動をスタートさせている。ファッション批評誌『vanitas(ヴァニタス)』No.006にロングインタビュー掲載