ファッションはゲーム

AFFECTUSの新井茂晃です。

今回は最初にお知らせをお伝えしたいと思います。

2019年10月からTopsellrで始まった僕の連載ですが、今回の18回目をもって最終回となります。今、新しい計画の実現に向かって動き始めています。発表まではまだしばらく時間を要すると思いますが、その計画に注力する時間とエネルギーが増えていくため、今回で最終回となりました。約1年半という期間でしたが、読んでくれた皆さん、ありがとうございました。

そこで、最終回となる今回は特定のブランドやデザイナーをテーマにするのではなく、「ファッションはゲーム」というテーマで話したいと思います。

モードには文脈がある

このテーマは、何度か書いたり話したりしてきたことで、過去に述べてきたことと重複する部分はあると思います。しかし、改めて今、僕はファッションはゲームだということを実感し、そのことについて述べさせてください。

先ほどファッションと述べましたが、モードと言い換えた方がいいでしょう。より厳密にいうならば「モードにおけるデザインはゲーム」と言った方が正しいです。

モードには歴史があります。現代のモードファッション、その始まりは1947年に発表されたクリスチャン・ディオール(Christian Dior)のニュールックだと僕は認識しています。第二次世界大戦中に体験してきた苦しい生活が終わり、パリの女性たちは華やかな美への、戦前のクラシックなエレガンスへの渇望が芽生えていました。

女性たちの心の底に潜んでいた渇望を、視覚化して具現化された服がディオールのニュールックでした。モードとはそのように時代の背景を投影して、デザイナーが創造的な解釈で服をデザインすることで、人々の新しい生活を提案することだと言えます。

そうしてディオールのニュールックが伝統のエレガンスとしての美意識を確立し、その美意識に対してさまざまなデザイナーが自身の解釈で新しい美意識をカウンターとして、ファッションの歴史に打ち込み続け、その連続が今に至っています。

歴史という名のルール

歴史に名を刻むファッションデザイナーたちが、ファッションの文脈を読み解きながらのデザインを意識して行ったのか、無意識で行ったのか、それは定かではありません。しかし、時代を見つめながら、未来に必要なファッションとは何かを模索したのではないかと思います。

ファッションの文脈を創造的に解釈することを競い合うことが、モードファッションにおけるデザインだと僕は考えています。それはまるで、一種のゲームのようにすら思えてくるのです。創造的解釈を競い合うゲームのように。

ゲームで勝つには、まずはルールを知る必要があります。そのルールに測ってゲームに参加しなければ、勝つことは不可能です。モードにおけるルールとは、ディオールのニュールックから現在に至るまでの歴史だと言えるでしょう。その歴史を知った上で、現在どのようなファッションが世界の流れを抑えているのか、それを知ることで新時代に向けた新しいファッションのデザインが可能になるように思えてくるのです。

ファッションは「今」が最も価値があり、最も注目されます。しかし、人々を熱狂させる「今」を生み出すには歴史を把握する必要がある。自身のデザインが、ファッションの歴史においてどの文脈に属し、その文脈上でどんな価値を作り出しているのかを訴える。

そんな行為がファッションデザインだと僕は思います。

最終回となる今回は抽象的な話になり、僕自身まだ明確にまとめきれていないテーマですが、ファッションにおいて最も重要なテーマだと僕が考えているものです。

ファッションはゲーム。これをテーマにして最終回としたかったため、現時点で書けることを書きたいと思いました。

引き続き、TwitterやInstagram、またメディア「TOKION」でも記事を不定期に発表していくので、ぜひ僕の書くファッションを読んで楽しんでもらえたらと思います。

みなさん、ありがとうございました。

〈了〉

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

新井茂晃
About 新井茂晃 16 Articles
1978 年神奈川県生まれ。 2016 年「ファッションを読む」をコンセプ トにファッションデザインの言語化を試みるプロジェクト「AFFECTUS(アフェクトゥス)」をスタート。 Instagramとnoteで発表しているテキストを一冊にしたAFFECTUS BOOKは、AFFECTUS ONLINE SHOP・代官山蔦屋書店・下北沢本屋B&B・鹿児島OWLで販売中。2019年からはカルチャーマガジン『STUDIO VOICE』、ニュースサイト『文春オンライン』への寄稿、代官山蔦屋書店でのトークイベント『AFFECTUS TALK』を開催するなど新しい活動をスタートさせている。ファッション批評誌『vanitas(ヴァニタス)』No.006にロングインタビュー掲載