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新聞やウェブニュースでご存知の方も多いと思いますが、三陽商会が大赤字に転落しました。2016年6月中間期ですでに赤字転落しましたが、その後の2016年12月期の決算見通しを大きく下方修正しました。
売上高700億円(前年比28.1%減)、営業損失68億円、経常損失66億円、当期純損失95億円という内容です。
原因は「バーバリー」ブランドのライセンス契約打ち切りによるものです。三陽商会も後継ブランドとして「マッキントッシュロンドン」と「ブルーレーベル・クレストブリッジ」「ブラックレーベル・クレストブリッジ」を発表しましたが、ネームバリューに雲泥の差があるため、旧「バーバリー」と同じようには売れなかったのです。当たり前のことです。もし同じように売れると思っていた人がいるなら相当におめでたいといわねばなりません。
報道の口調や三陽商会側の発表を聞いていると、「マッキントッシュロンドン」の不振にスポットを当てているように感じられるのですが、個人的には「クレストブリッジ」の不振のほうが大きいのではないかと考えています。
価格帯は同じであるものの「バーバリー」と「マッキントッシュ」とではネームバリューが月とスッポンほども違うので、三陽商会も同じように売れるとは考えていなかったと推測されます。一方、「クレストブリッジ」はバーバリーとの新しいライセンス契約によって生まれたブランドです。ですから三陽商会は旧「ブルーレーベル」「ブラックレーベル」と同じくらいに売れると考えていたのではないでしょうか。
しかし、「クレストブリッジ」がバーバリーとの新しい契約に基づいてできたブランドだという背景事情は一般消費者にはほとんど知られていません。業界人でも知らない人がいるくらいです。となると、クレストブリッジをバーバリーだと認識する人はほとんどおらず、そんな胡散臭い見知らぬブランドが「バーバリー・ブルーレーベル」「バーバリー・ブラックレーベル」の代わりに買われることなどあり得ません。あらかじめ苦戦を予想していた「マッキントッシュ」よりも、楽観的に見ていた分だけ三陽商会にとって「クレストブリッジ」の不振はキツいのではないでしょうか。そしてそう簡単に売上高が好転することは考えられませんから、三陽商会はしばらく苦しい戦いを強いられるでしょう。
それはさておき。マッキントッシュもクレストブリッジも旧バーバリーからそのまま転換した店舗が多くあります。おそらく販売員の顔ぶれもほとんど同じという店舗も多いのではないでしょうか。同じメンバーが売っても売れないということです。もちろん販売員のスキルでブランドの売上高は大きく左右されます。しかし、商品やブランドネームが違えば販売員のスキルをもってしてもその差は埋められないということでもあります。
商品力・ブランド力と販売力・卸売りブランドの場合なら営業力は両輪でどちらが欠けても会社は大きく躓くことになるのです。今回の三陽商会の事例はそれを示しているといえます。
どの会社でも企画部門と販売部門、営業部門は仲が悪いものです。企画部門は「営業と販売がヘボだから商品が売れない」と考えますし、営業と販売は「商品企画が悪いから売れる商品が作られない」と考えます。これはアパレルに限らずどんな分野でもほぼ同じです。
しかし、本当は両部門があるから売上高が作れるのです。作るだけでは商品は売れませんし、商品がなければ売れません。バーバリーなら売れた販売員でもマッキントッシュやクレストブリッジのブランドネームでは売りにくいのです。今回の一件は、商品力やブランドネームの重要性が改めて認識されたのではないでしょうか。
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