形骸化する産学連携

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「産学連携」という言葉をご存知でしょうか?

企業と教育機関が連携して人材育成や新事業を創出する事を目指した取り組みの事ですが、これが多くのケースで形骸化しているように感じております。

 

実践が最高の学習・海外の教育機関の実例

海外のファッション教育機関では、学生を積極的に現場に出していっているのがわかります。現在活躍中の有名デザイナーの経歴を見ましても、結構な頻度で学生時代、コレクションブランドでのインターンを経験しています。

感じる服 考える服(山縣良和氏)

アレキサンダー・ワン

プロエンザ・スクーラー

上記のような例は珍しい事ではありませんが、日本ではあまり馴染みがありません。日本人の中では、writtenafterwardsの山縣良和さんが大阪文化服装学院を経てセントマーチン美術大学に留学し、その後アンソフィーバックやジョンガリアーノのアトリエでインターンを経験。その実践が糧となり今があるように思えます。

以前、僕が勤務している学校の一つで、ファッションジャーナリストのミーシャジャネットさんが講演に来られた際、「日本の専門学校(東京文化服装学院)に来てインターンがほとんど無い事に驚いた」と仰ってました。ミーシャさんはその事を否定的には捉えていませんでしたが、海外と日本で大きく違うのは、実践的なインターン数なのではないでしょうか。

 

形骸化しているのはインターンの内容

日本の教育機関の多くはデザイナーに限らずこういった実践的なインターンが少ないのです。繊研新聞などで「産学連携」の取り組みが取り上げられておりますが、その結果どうなったかが不明です。内容を見ていてもビジネスの現場に放り込むというより、模擬的にショップを運営したりバイイングさせたりという中途半端なものが目立ちます。これで学生たちがどんな技術が身についたというのでしょうか。産学連携が形骸化している理由は「実践」の場が少ないからに尽きます。

仮に実践の場があっても学校側が十分な指導を学生にしているのかも疑問です。とある専門学校の取り組みで期間限定ショップがありましたが、ほとんどが学生に丸投げという状態。ショップ運営の手法や集客など、学校側が学生にもっとプッシュして指導しなければいくら実践的にやっても成功はしにくいでしょう。

 

人材育成よりも経営が重要?

企業側は人材育成と獲得に必死ですが、学校側からすれば育成よりも入学する学生の数の方が大事です。専門学校も商売ですから入学者数が伸びなければ経営は成り立ちません。そして入学者の母数が増えれば売上が上がるだけでなく、それだけ卒業後に活躍する学生の数も増えます。教育の質云々より確率論です。

更に言ってしまうと、就職率なんて何とでも操作できてしまいます。学生が就職を希望しない場合は分母から外したり、販売員でもアルバイトさえ始めていれば就職にカウントしたり…。学生が卒業後活躍する為に教えるという事を放棄しているように感じる部分もあります。全てのファッション教育機関がこうであるという訳ではありませんが、珍しくもない事例です。

 

教育機関の本質は「底上げ」にある

これは持論ですが、僕は教育における最も重要な部分は優秀な人材を更に伸ばす事よりも、「底上げ」にあると考えています。優秀な人材は自助努力が出来たり、自ら環境を変える力を持っていたりしますが、そうでない多くの学生は環境が全てです。教育機関がその環境を整えてあげる事が本来の役割ですし、その為には最低限の知識やスキルを習得させ積極的に現場に出さなければなりません。体裁ばかりを取り繕う名ばかりの産学連携など必要ありません。学生にとって本当に身のある環境、そういった体制を整えれるよう微力ながら業界に貢献したいものです。

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深地雅也
About 深地雅也 155 Articles
株式会社StylePicks CEO。コンテンツマーケティングをメインに、ECサイト構築・運用・コンサルティング、ブランディング戦略立案、オウンドメディア構築、販促企画などをやってます。最近はODM・OEMメーカーのブランド設立支援、IT企業のアドバイザー、服飾専門学校講師、ライター業なども手がけてます。