百貨店業界がかつてない苦境に陥っている。アパレル企業と相互依存のビジネスモデルがほぼ破綻し、大きな方向転換を迫られているからだ。かつて隆盛を誇った「小売業界のキング」が緩慢な死に向かいつつあるのはなぜか。
(中略)
百貨店の不振は、全体の売上高の3割を占めるアパレルの不振と表裏一体だ。「婦人服を中心としたアパレル部門は大変厳しい状況にある」(高島屋の木本茂社長)ことで、百貨店の屋台骨が揺らいでいる。
最近の若者は百貨店でお買い物をする習慣があまりないと思われますのでピックアップしました。百貨店の不振の原因をわかりやすくまとめてくれた記事であり、ざっくりと原因は下記の三つ。
・専門店やファストファッションなどのSPAの台頭
・アパレルと百貨店の古くからの商習慣(消化仕入れ)
・「変革」が失われた企業体質
消化仕入れに関して知らない人はこちらご参考までに。
本質的には過去からずっとテナント屋
百貨店の不振に関しては今に始まった事ではなく、僕が新卒だった10数年前からずっと言われ続けていました。商品の選択肢が少なく、インポートが舶来品と呼ばれ飛ぶ様に売れた時代とは違い、今は低価格で良い商品が多様にあるのだから当たり前と言えば当たり前です。しかしそんな中でも百貨店の人たちは意外と楽観的で常に殿様商売な気質だったと記憶しています。
例えばブランドの展示会に来店しても、商品を買い取る訳ではありませんので緊張感がまるで無い。消化仕入れだから在庫リスクは全てブランド側ですし、自主編集売り場ですら委託販売が多くを占めていますから、売れなくても返品可能です。そんな条件の中、自店の限定品が欲しいと言ってくるバイヤーもおりますがそれももちろん買い取りではありません。それらを当たり前のように言ってくる上、ひどい場合は商品を見て「パッとしないね」と言って帰る方もいらっしゃいました。
ブランドの売上が不振に陥ると、対策は社員食堂でのセールか催事などの割引の提案ばかりで高級品を売るはずの百貨店がまるで今のSCと変わらない状態。顧客管理と集客が仕事のはずなのに、その集客すらブランド側に全て押し付ける社員もいたくらいです。もちろんブランド側も全てにおいて努力すべきだとは思いますが、テナント屋の域を出ないのは過去からずっと続いているのです。
ギンザシックスは「変化」の事例ではない
冒頭で紹介した記事の最後には「変化」が必要と記載されており、その一つの事例としてJフロントリテイリングのギンザシックスが挙げられています。
商品を仕入れるのではなく、アパレルなど多様なテナントの出店を誘致し、賃料収入を得る形式を広げ始めている。
という一文がありますが、賃料収入の何が変化なのでしょうか。先述した通り、過去から消化仕入れ然り、中の企業体質然り、本質的にはテナント屋です。それを収入の形態が変化しただけで「百貨店からの脱却」と謳うのはロジックが意味不明です。ただただ開き直っただけに過ぎません。
個人的見解ですがギンザシックス自体はラグジュアリーブランドや、今までセレクトでしか買えなかったブランドをハコにし、百貨店から食品コーナーを抜いた程度にしか見えません。香港やシンガポールのような観光大国にある巨大なSCと比較すると落胆した方は多かったのではないでしょうか。
某プロフェッサーでさえ、手のひらを返してしまうほど売れてないギンザシックスを褒め称えてる業界人とか日経ビジネスとかはアホなん?
ラグジュアリーブランドを寄せ集めただけのギンザシックスの何を見て「新しい」と言ってるの?— 南 充浩 (@minamimitsuhiro) July 28, 2017
(ご意見番のきつい一言…)
これをもって「変化」と謳えるのだから、百貨店には今後復活の目処など無いでしょう。伊勢丹の前社長である大西洋氏は百貨店の変革に失敗しましたが、営業時間の見直しや買取商品の比率の向上など、施策としては非常に正しかったように思います。
大丸が掲げている企業理念の「先義後利」をもう一度よくお考えになって、本質的な意味での変化をしてほしいと願うばかりです。