「わかる人が買ってくれればいい」のわかる人はどこにいる?

「わかる人が買ってくれればいいかな」

という言葉をよく耳にします。

今年に入って、ブランドを立ち上げたい、や売り上げをあげたい。などの相談を受けた時です。

大抵その言葉には

「わかる人っていうのはどこにいるのですか?」

とわたしは返すのですがほとんど具体的な返答は返ってきません。

国内海外のデザイナーズブランドも大好き人間なので、より広がっていってほしい!と思う反面、買い手不在の中で物作りが進行するケースは多く、一度はぶつかる問題だと思います。

 

なぜターゲット不在の商品が出来上がるのか

これに関しては最近感じることがあり、

ファッション業界というのは、”経営者”がビジネスとして立ち上げるよりも

”デザイナー”がブランドとして立ち上げることの方が圧倒的に多いからだと思います。

というのも、”経営者”がビジネスとして立ち上げる事業というのは、事業規模を大きくすることが(スタートアップから数年は特に)重要課題と言えます。

企業としての責務がある以上は、多くの人に求められるものを作り、そこに雇用を生み、社会にとってどう貢献するかというのも大事な指標だからです。これには社会的意義も大きい。

人を雇うためには規模を大きくし、さらには雇った人の雇用を守るため、さらなる利益を求めていきます。

なので「わかる人が買ってくれればいい」という悠長なことは言ってられません。

そのため、投資家を入れてアドバイスを募ったり、腕利の営業を雇ってみたり、徹底的なユーザーヒアリングを行います。

「確実に売り上げとなって返ってくるもの」を狙うのです。

対してデザイナーズブランドが陥りやすいターゲット不在の原因は

「衣料品に比べ高額であるがゆえの理由付けをデザイナー独自の世界観に求める」からではないかと思います

世界観で高額な商品を買ってもらうとなると、ギリギリのところを狙う必要ができてくるのでなおさらターゲッティングが必要かと思いますが、世界観を自分自身の内面に求める結果、外とのすり合わせが行われない。

また、友人や業界人からの買いが付きやすく、人を雇っているわけでもない以上食べていくことはできる立ち上げ初期の個人経営が苦しくも成り立つから。かもしれません。

中には展示会はバイヤーのみとして立ち上げ初期からストイックに運営するブランドさんもあります。

続けていけて、求める規模感に近づけていけるのなら、どちらも有効な手段にはなりますが、認知が足りずに売れなかった結果ブランドが続けられなくなったり、なんとなく続けてはいるけど、外からのブランドの見え方に気がついたときに「あれ?これでいいんだっけ?」とならないようにしたいものです。(自戒

 

 

”ユーザーにとっての”デザイナーズたるポイントを見極める

じゃあデザイナーズは、対して何ができるのか。

あえてターゲットを絞った上で服作りを行うことを決定するならば尚のこと、

そこに対して何を作り、どのようにアプローチしていくのかは重要であると言えます。

その時に自分自身の気分や好みで物作りを行っていては、ユーザーが見えないのはもちろん、プロモーションや営業の動きも取りにくい。しかし、そこがデザイナーズとしての強みであるという認識は未だ強いように思います。

もちろんデザイナー独自の世界観や、デザインへのアプローチは他にはない武器となりえます。

しかしそれはより適切な環境でユーザーの目に触れればこそです。

そこに対しても一度や二度のアプローチで認知されていけばいいですが、競合が多く供給過多に陥っている市場の中では続ける忍耐力もまた必要と言えます。衣料品の枠から外れたファッションという市場は激戦区です。

多くの場合はセレクトショップや百貨店の卸・委託を行うと思いますが、そうなると消費者・バイヤー双方への説得材料が必要になります。

その時にターゲッティング・マーケティングを度外視して服作りを行ったとして、売れるのか。

ちょっと難しい・・・。

デザイナーズである意義は

デザイナーたちの生み出すパーソナルな世界観を、”ユーザーに伝わりやすく求められる”ブランドアイデンティティに置き換えられるかが重要といえるように思います。

 

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中溝 雪未
About 中溝 雪未 69 Articles
1990年生まれ。コレクションブランドの企画室でインターンからデザイナーアシスタントとして勤務。その後アパレルブランドで布帛・ニットをはじめとするデザイナーの経験を積み独立。現在フリーランスとして企画・デザイン・パターンを担当。 プロダクトアウトなものづくりからマーケットインまで、偏らないバランス感覚を武器に、コンセプトメイクからお客様に届くまでをディレクションするプランナーとして業界を問わず活動中。