「原価率50%」
最近飛び交うこの言葉。
これがすごいかどうか、とてもめずらしいかどうかをまず個人的に判断すると
そのようなアイテムはいまも存在しているし、作ったこともある。
とだけは言っておく。
ただコンセプトを原価率50%に。というのはあまりないようにも思う。
あまりないようにも思う反面、原価率50%だから買うのかと言われると首を傾げる。
原価率は決め手か
「いいものを安く提供する」というのは字面だけみれば消費者にとってとても喜ばしいことで、口を揃えて頷くかもしれない。
それは彼らの選択肢の中に「いいもの」が増えたということだ。
もちろん選択肢のなかに加えられたことが喜ばしいだけで、それは本当に買うという確約ではない。
「安いものを高く売る」は詐欺のように言われがちだが、商売の本質である。
「高いものを安く買う」は消費者の本音であるが同時に「安くてもいらないものは買わない」も同じく本音である。
「原価率50%」の意義がどこにあるのかを示してくれるのはもしかしたらTOKYO BASEの次の一手かもしれない。
ブランドを買収しLVMH化をはかりそちらで利益率をあげるからこそできる一手なのかもしれない。
彼らが買収を続ける国内ブランドおいて考えれば、海外のラグジュアリーほどはブランディングビジネスが成立しているとは言えない。
国内ブランドの、そこの解決策がこれだとするとやや首を傾げてしまうのだが。
良いデザインには良い素材
とは限らない。
CITYを語るときに原価率50%に意識が引っ張られると忘れがちだが、マッシュHDのMila Owenは、素材こそ他ブランドと同等とはいかないがユニクロよりは高いが他ブランドよりは安いという絶妙な値段設定で打ち出し、売り上げを伸ばしてきた。
売り上げを伸ばした要因はその的を絞ったブランディングで、商品のツラはもちろん、店舗の雰囲気や入っている館から、その接客から「コスパ感」が見て取れるからだ。
媒体へのタイアップも子持ちモデルが多い主婦向け雑誌が多く実にニーズを反映していると言えるし、トレンドもしっかり溶け込ませたベーシックは、同社の他ブランドとも着あわせやすいデザインになっている。
いくら安くても、コスパが良くても、やはりデザイン性やブランディングは求められるのがこの価格帯で、その点TOKYO BASEにおいてはブランディングはうまそうだ。
その背景で心配なのは、生地や生産などの方で、ファクトリーを持っているわけではない彼らが原価率50%を行うこと。
またアパレル業界では価格交渉という名の下に、他業界ではありえないような買い叩きが存在することは周知の事実だろう。
一番最初に書いた通り、原価率50%の服はわたしですら担当したことがあるほどに、わりと世の中には存在している。イタリアの生地を使ったコートは、上代も相当高かったが、確かそのくらいになったはずだ。
しかし、他の原価率20〜40%の商品に溶けこめるほど、ツラでの判断は難しい。
だからこそ高原価率を売りにするなら相当高(く見える)い素材、相当いい仕立て(に見える仕様)にしなければ差別化は難しいはずなのだ。(それって上代1〜2万のハーフでできるのかしら)
神は細部に宿る、が、細部だからこそ集合体とならねばならない。
もしくは徹底的に魅せるデザイン力。
セレクトショップに置かれるセレクトのバッグや服は、デザインの完成度も高く目を惹くものも多い。
しかしデザインを良くするために必要なのは高級な素材か、というと一概にイエスではなかったりする。
刺さってるようで刺さらないこの感じ。
「原価率が高そう」と思わせる、「これはコスパがいいぞ」と思わせる施策はなんなのか。
あくまでインナー向けの方針で、いつも通り見せ方と独特の接客で乗り切るのか。
国内の産地や縫製工場の中でも、高い技術とセンスを誇る企業が、海外ラグジュアリーブランドなどと取引をしている例は数多くある。(そのほとんどはオープンにされないが)
良い素材、良い技術をどう生かすのかは企画サイドに委ねられているといって良い。
どのようなビジネスにしていくのか、どんな服が生まれていくのか注目度は高い。
【TopSellerの執筆者が書く「表では話せない話」はこちら→トプセラ×note】
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