世の中に「絶対的存在」はない

25年前、百貨店への出店がアパレルでは勝利の方程式だと思われていました。

もちろん、内情はそんな美味しいことばかりではありませんでしたが、百貨店に勝る集客力を持った商業施設がなかったからです。

20年くらい前になると、大店法の緩和によって、イオンモールやアリオ、アピタなどの郊外型大型ショッピングセンターが各地に建ち始めました。

97年の山一証券と北海道拓殖銀行の破綻によって一気に不景気感が増したため、消費者は低価格志向になり、大型ショッピングセンターは瞬く間に生活に浸透しました。

そうなると、百貨店ではなく、大型ショッピングセンターへの出店が新・勝利の方程式と見なされるようになり、各アパレルが低価格ラインを開発しました。

2005年ごろからインターネット通販が注目され始め、2015年以降目に見えて成長してきました。

そうなると、今度はインターネット通販が新・新・勝利の方程式だと見なされるようになりました。

 

今でも百貨店、大型ショッピングセンターは健在ですが、先を争って出店するような場所ではなくなりましたし、力を付けたブランドは、単独路面店を出店して自由に販売しています。

インターネット通販もそれと同様だということです。

例えば、昨年末からオンワード樫山、ミキハウス、4℃、パーリーゲイツ、ライトオンなどの有名ブランドがZOZOTOWNから撤退し始めていますが、それは百貨店や大型ショッピングセンターから有力ブランドが抜けて単独路面店を出店していったことと同じ流れだといえます。

インターネット通販を開始したばかりのブランドやショップは集客力がないですから、リアルでいえば大型商業施設であるZOZOTOWNに出店してきました。

手数料は取られますが自社サイトではかなわない集客力を担保してくれるからです。

しかし、アパレル各社も根っからのアホではないですから、少しずつ自社ECサイトを強化してきました。もちろん、某トウキョウベースのようにまったく強化せずに依存しっぱなしの企業もあります。それは経営者の判断ですから、何も申しませんが、個人的には先見の明がなかったと見ています。

徐々に自前サイトが集客力を持ってくれば、商業施設から撤退するのは当たり前です。今回起きていることは単に昔の百貨店、ショッピングセンターで起きたことが、ネット内で起きているということに過ぎません。

百貨店やイオンモールが絶対的存在ではなかったようにZOZOTOWNも絶対的存在ではなかったということです。

この世に絶対的存在はありません。すべての物は相対的に役立てば使われ、役に立たなくなれば使われなくなるのです。ただそれだけのことで、百貨店やショッピングセンターが存続しているようにZOZOTOWNも存続するでしょう。

けれど2017年末までの「絶対的存在」ではなくなるというだけのことです。

 

とかく人は特定の事物に思い入れをしてしまうものです。百貨店しかりZOZOTOWNしかりです。個人的にはそういう事物への過度な思い入れは何の益もないと考えています。

特定の事物に思い入れすることなく、見ることが重要ではないかと思います。

 

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】