かつて日本製衣料品は「安物」だった

日本製の製品はやはり高くなります。

それは洋服に限らずです。先日、持ち運び用の軽量ノートパソコンを買おうと思って大好きなAmazon、Yahoo!ショッピング、価格コムなどを散々渡り歩きましたが、富士通や東芝などの国内ブランドの製品は安くても8万円くらい、納得のいくスペックを買おうとすると10万円を越えます。

中古品なら3万円程度でありますが、中古品はその個体の状態がそれぞれ異なりますから、当たり外れがあります。

一方、中国ブランドの軽量ノートパソコンはスペックは今一つですが、29000円くらいからあります。

もちろん、こちらも納得できるスペックの製品だと7万円くらいになりますが、最低価格だと優に倍以上の開きがあります。

ここまで価格差があれば、国内ブランド品を買うこととためらってしまいます。

結局、当方は東芝の中古品を30000円で買ってみましたが、試しに起動してみたところトラブルはなさそうなので、しばらくは出張や遠出にはこちらを持っていきたいと思っています。

洋服にしても概ね同じ傾向にあります。

もっとも最近は中国の人件費が上がっているため、中国製でも高くなり、それを嫌ったブランドは国内外を問わず、人件費の安い東南アジアに製造拠点を急激に移していて、衣料品における中国製品は激減し始めています。

さらにいえば、中国人経営者自体が生産拠点を東南アジアに移転しており、90年代前半の我が国と似たような状況になっています。

今回のテーマは、日本製品は昔は「安物」だったということです。

敗戦後しばらくすると我が国は衣料品を輸出し始めました。低価格衣料品を製造して輸出していたのです。

我が国に限らず、どこの国も工業を起こすときには、軽工業から出発します。鉄鋼や造船、自動車、家電などの重工業は開発や製造において、高度な専門的知識と技術がいるため、国が貧しいと手を出すことはできません。

しかし、繊維や衣料品などの軽工業はそこまで高度な専門知識も技術も必要ないため、発展途上国が手を出しやすいのです。

かつて最貧国の1つだった中国が最近まで繊維と衣料品製造ばかり手掛けたことを見てもそれはお分かりでしょう。

で、我が国が輸出していた低価格衣料品の中で特に大ヒットしたのが、アメリカ向けの「1ドルワイシャツ」です。当時のレートは今よりももっと円安でしたが、それでも360円くらいだったでしょう。

アメリカ人からするとワイシャツが1ドルで買えるということですさまじいブームとなったそうですが、アメリカ国内の業者からの猛反発で長続きはしませんでした。

ジジイといえどもまだ当時は生まれていませんから、伝聞と記録を読んだにすぎません。(笑)

どうでしょう?

これって、10年前の中国製品や今の東南アジア製品と同じだと思いませんか?

今でこそ、日本製は高価格品になっていますが、昔の日本製は「低価格品」だったのです。国にも人間と同じでバイオリズムがあります。国力が永遠に増し続けることはありませんし、永遠に低下し続けることもありません。だいたい30~100年周期で上がったり下がったりするものです。

それとすべての状況は短所と長所が表裏一体なので、もし仮に日本の工場の工賃が下がっているのなら、今度は海外に輸出するチャンス、もしくは海外製品よりも安く作って国内で売るチャンス、とも捉えられます。

越えるべきハードルはいくつもありますが、基本的戦略を持つのと、持たずに場当たり的に騒ぐのとでは対応がまるで変わってきます。

この辺りももっと冷静に各人が考えるべきではないでしょうか。

というジジイの繰り言でした。(笑)

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】