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売上高というのはいくら難しいことを言っても、「買い上げ客数×客単価」の結果でしかありません。現在の経済状況下と社会の成熟度合から考えると、客単価を大きく上げることは非常に難しい。というわけで、各社は買い上げ客数を増やすことを優先的にやっています。例えばストライプインターナショナルなんて毎日のようにタイムセールを繰り返しています。またレジにて○○%引きも盛んです。夏冬のバーゲン終了間際の時期は全品80%オフからさらにレジにて20%引きなんていう、いったいどんな原価率で製造しているのかと疑問を感じるような売り方をします。
これらは客単価を下げてでも買い上げ客数、または入店客数を増やそうという取り組みの現れでしょう。あとは、金を払って在庫を処分するくらいなら、1円でもいいから現金化したいという考えの現れでもあるでしょう。
こういう新規顧客獲得ビジネスの最たる例は、携帯電話販売でしょう。年初から法律が改正されましたが、これまで大手3社は新規流入客優遇策をとってきました。「他社から乗り換えると機種代無料な上に○万円キャッシュバック」というあれです。10万円近くするiPhoneが無料になるだけでなく、1万円とか3万円がキャッシュバックされるのですから新規客にとっては美味しい限りです。その一方で、5年も6年も使い続けている固定客には何のメリットもありません。支払い損のような料金プランで固定されています。
この結果、2年ごとに携帯電話会社を移動することがメリットが一番大きいとして、そうする人が増えました。ぼくの知人も実際にそうしていました。機種を無料で手に入れ、2年に1度○万円というキャッシュバックを受け取れるからです。
今後、法律改正でどのような消費形態になるのか興味をもって観察したいと思います。
固定客を大事にしていないから新規顧客を争奪しないとやっていけないという見方もできます。新規顧客争奪の自転車操業です。
しかし、一方で固定客を重視するというビジネス形態もあります。高級料亭や高級旅館などがそれです。とくに京都には「一見さんお断り」というおっかない料亭や旅館があります。一般消費者からすればムッとしますが、固定客からすれば明らかに優遇されているのがわかり、店に対するロイヤリティがさらに高まります。新規顧客が入りづらいほどの差別化はどうかと思いますが、成熟化社会においては固定客重視のスタイルのほうが適しているのではないかと思います。とくに高級店と呼ばれる店においては。
この点で失敗したのが百貨店です。凋落したとはいえども百貨店はいまだに高級イメージで見られています。普段利用しない人でも贈答品を買うときには百貨店という人も少なくありません。衰えたといえどもそれくらいのステイタス性は保っています。
三年ほど前から中国人観光客の爆買いが話題になりました。日本人では考えられないほど多額のお金を消費しました。日本人の消費が伸び悩んでいますから、当然各社はこれに飛びつきました。百貨店も飛びつきました。
ところが2016年に入って中国人観光客の購買力が急激に低下しました。
理由はいくつか考えられます。持ち込み品への関税が引き上げられたこと、高額品は一通り買いつくしたこと、円安傾向が円高傾向に転換されたこと、などが考えられます。この結果、百貨店各社の売上高が低下しました。とくに爆買いのメッカとされていた銀座が激しい落ち込みです。当然、百貨店の銀座店の売上高も激減です。
三越銀座店は外国人向けの免税店まで設置しましたが、ほぼ無用の長物と化しつつあります。三越伊勢丹HDの首脳によると、外国人客単価は30%減の感触だといいます。またこの首脳は「外国人対応を強化しすぎたために、日本人の富裕顧客の上位3割を三越銀座店から逃がしてしまった」とも付け加えました。
爆買い中国人という新規流入客を重視しすぎたために、日本人富裕顧客の上位3割というロイヤルカスタマーが離れてしまったことは大きな痛手といえます。みなさんのお店も新規流入客を重視しすぎてロイヤルカスタマーを逃がさないように気を付けてください。
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