「今年の春も13人採用します。でも、7割の人はせっかく全国から応募してもらったのに不合格にさせてもらいました。ツラいですわ」と、安達正敏社長。お隣で、創業者の岩崎靖璋(やすあき)会長もうなずいています。ということは、東大阪の一中小企業に北海道から沖縄まで全国から約50人以上も応募があったということです。」
(中略)
人気の秘密は、社内に設けられた職業訓練校と、本社工場に隣接する社員寮にありました。 こちらの会社に就職すると、洋裁が学べるうえに給料がもらえ、さらに安い社員寮に入って縫製の国家資格にも挑戦できるのです。1、2級洋裁士、洋裁技能士、洋裁技能士補、中には特級を取得する社員もいます。こちらの社員は、挑戦した資格でほぼ100%の合格率を誇っています。
先週は工場で働く人が少ないという内容でしたが、今回はそれとは真逆で人材を担保できているという工場のお話。秘密は社内にある職業訓練校や社員寮の完備、未経験者でも学びながら給与をもらって仕事ができるという待遇。
人材を育てる際に最も難しいモチベーションのコントロール
目の前に喫緊の課題がないと中々動き出せないのが人間です。それなら課題を創出してあげればいいんですが、これが教育機関では非常に難しい。学校での座学や実習程度では、本当に解決しなければならない課題が見つからないのです。仮に見つかったとしても、それを「解決しなければならない」というマインドになりにくい。だからそういう環境に追い込む事。それが現場と教育を組み合わせる事に他なりません。
実践は最大の教育現場
実践の場こそが最も学習効率が高いという事は社会に出ているほとんどの方がおわかりだと思います。今のご自身のスキルが身についたのは専門学校や大学です!なんていう人はほとんどいないのではないでしょうか。では教育機関は全く必要ないのか?という事ですが、イワサキさんのようなやり方が浸透していけば必要なくなるでしょう。
僕が今教育の現場でやっているのは、学生をなるべくインターンやアルバイトなどの現場に出し、現場で出てきた課題を学校で解決していく、というサイクルにしようとしています。現状、現場と教育は切り離されているケースがほとんどで、イワサキさんのような事例はごく稀です。アパレルは販売員を中心に人材不足だと言われていますが、それでも人気企業にはある程度の応募があります。それをふるいにかけている方が今のところは効率が良いのでしょう。しかし人材獲得コストをそこまでかけれない中小の事業者は、是非このような取り組みをしてほしいと考えております。
自分で身を置いていて恥ずかしい限りですが、ファッション教育機関は怠慢を続け、おしりに火がつきだしている事に気がついていない人も多くいらっしゃいます。若者の未来を真剣に考えるのであれば、現場と教育を切り離さず、学習効率の高いより良い環境を作る事を最優先で取り組みたいものです。