オールユアーズという会社が展開する「ディーパーズウェア」というブランドがあります。
知る人ぞ知るという感じのブランドですが、ヤフーニュースでも大きく取り上げられました。
今流行りのクラウドファンディングで、ファッション部門では史上最高額の1800万円を集めたからです。
このブランドの洋服は、外見はベーシックなカジュアルですが、優れた機能性を持っていることが特徴です。
撥水、速乾、超ストレッチなどです。
通常、機能性服の売り方は「こんなに優れたスペックがあります」ということを数値を使って示します。
1時間あたりに何グラムの〇〇を排出します、とか、何CCの水を弾きます、とか、そういう感じでPRを行います。
ですが、そんなに次々と新しい機能性が生まれるわけではありませんから、特定の機能のバージョンアップを施しながら、素材メーカーもアパレルブランドも消費者に売ることになります。
そうなると、競合ブランドとの間で「機能性競争」が起きることになります。
例えば軽量ダウンジャケットが流行した時には、A社は50グラム軽くしたがB社は75グラム軽くした、みたいなことが起きました。
しかし、はっきりいってプロのスポーツ選手やガチの登山家でもない限り50グラムの軽量化なんてどうでも良いのです。
消費者はそれに対してそんなに関心もないし、必要性も感じません。
ですから、軽量化に限らず、機能性素材はすぐに陳腐化してしまい、打ち出しもワンパターンになりがちです。
小なりといえどもディーパーズウェアが売れた理由としては、「同じ機能でも切り口を変えること」によって新鮮味を与えることができたからです。
もうすっかり定着した吸水速乾素材ですが、これを今まで通りに吸水速乾素材として紹介するなら、いずれはスペック競争に巻き込まれることになります。
「うちのほうが乾くまで1分早い」とか「うちのほうが乾くまで30秒早い」というような競争になってしまいます。
ところがディーパーズウェアは、吸水速乾素材を「部屋干しで早く乾く機能」と再定義したのです。
こうすることでありふれた吸水速乾素材は新しい付加価値を得ることができましたし、一人暮らしや夫婦二人暮らしの人にとっては日常的に使える便利な商品というポジションを獲得しました。
ですから1800万円分も受注を得ることができたのです。
また、以前に「色落ちしない黒いズボン」も企画しましたが、これも価値の再定義なのです。
元の素材はポリエステル100%で、染色した生地でも洗濯をしても色落ちはほとんどしません。
その性質に目をつけ「合繊パンツ」として売るよりも「色落ちしません」という新たな切り口を与えて商品化することに成功しました。
単なる合繊パンツとして売り出せば、消費者から二束三文で買いたたかれていたでしょう。
しかし「色落ちしない」という新しい切り口での価値を与えることで1万円以上で売れる商品に仕上げることができたのです。
このようにありふれた素材や機能でも新しい切り口によって価値を与えることができるのです。
売れ行き不振に苦しんでいるブランドやアパレルは、こういう作業を放棄してしまっているのではないでしょうか。
スペック競争にも限界はありますし、価格競争にも限界があります。
そのどちらにも巻き込まれたくなければ、こういうやり方もあるということなのです。
頭の片隅に置いておいて損はしないでしょう。
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