H&M、ZARAの隆盛を見ていると、「外国ブランドにしてやられる我が国」という印象を持ちがちですが、意外に我が国市場は外国ブランドの参入を拒んでいます。
消費者メリットが感じられないブランドは受け入れられません。
世界有数のスーパーマーケット、カルフールとテスコの撤退はそれを物語っています。
またウォルマートやイケアの伸び悩みもそうでしょう。
アパレルでいうなら、トップショップ、イーランド、オールドネイビーの撤退、フォーエバー21の苦戦、ジョルダーノの相次ぐ失敗はその好例といえるでしょう。
カルフールとテスコは欧州流をそのまま持ち込んだことで日本の消費者から支持されませんでした。
イケアは当初はブームだったものの、お客に家具を組み立てさせるという点が一部のDIY好き以外からそっぽを向かれて700億円台で足踏みを続けており、我が国ブランドのニトリに大きく水をあけられています。
今や、都心百貨店までもが集客装置としてニトリを相次いで誘致することを思うと、店舗数も増えず、郊外立地のみで展開しているイケアはまったく成長の展望が見えません。
トップショップは国内運営業者のおかげで価格メリットが感じられませんでしたし、イーランドは韓国ブランドらしく、商品の品質とデザインがイマイチで安かろう悪かろう以外に取り柄がありませんでした。
フォーエバー21はジーユーやウィゴーあたりの成長によって不要となりましたし、オールドネイビーは自社のGAPとのすみ分けに失敗しました。
ジョルダーノはずばり、ユニクロがあれば不要です。
このように意外に参入しにくいのが我が国の市場といえます。
古くバブル期はこの市場特性が、欧米からは「新規参入に不利な特別な罠があるのではないか?」と疑われ、ジャパンバッシングが起きましたが、それは彼らの被害妄想に過ぎず、日本の消費者はある意味でもっとも合理的な判断を下してきただけだといえます。
いくら、アメリカが声高に叫ぼうが高くて燃費が悪くて図体がデカいアメリカ車は売れないのです。
さて、以前、西脇産地の産地展の手伝いをしたことがあります。
その際、当時、オーストラリアブランドとの取り組みが発表されました。
その後どうなったのかは報道されないのでわかりませんが、わざわざ取り組んだ理由というのは、「オーストラリアには名の知れたファッションブランドがないから、売り込みやすい」というものでした。
地理的な位置は別として、オーストラリアは欧米国家の一つとみなされていますが、衣料品分野に限って言えば名の知れたブランドがありません。西脇産地としてはここに目を付けたことはなかなかの妙手だったといえます。
先日、発表されたファーストリテイリングの8月期決算では、海外ユニクロが東南アジアとオセアニアで成長したと報告されていますが、同じ要因だといえるのではないでしょうか。
羊毛や牛肉などの特産品はあるものの、衣料品や機械などでは名の知れた国内ブランドがないオーストラリアはグローバル企業にとっては美味しい市場といえます。本当に「外国ブランドにやられやすい」というのはオーストラリアのような国のことを指すのです。
そういう意味では、我が国の消費者リテラシーはなかなか高いと言わざるを得ません。
そういう消費者にどのように対応するかが、ブランドとしてショップとしての生き残りを左右するといえます。
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