日本産が高く評価されているものの中の一つにデニム生地があります。海外の名だたるブランドが日本産デニム生地を使っていることは割合に知られています。しかし、繊維業界紙記者を除くとその実情はあまり正しく把握されているとはいえません。今回はその実情をまとめなおしてみたいと思います。
国内最大手のデニム生地工場というとカイハラです。カイハラの特徴は紡績から整理加工まですべての工程が自社内で一貫できることです。
通常、デニム生地の工程は大きく分けて、
紡績→ロープ染色→織布→整理加工
となります。この工程すべてを自社内でできるのはカイハラ以外に国内には存在しません。国内2位のデニム生地工場、クロキは紡績を除いた染色から整理加工までの全工程が自社内で可能です。一貫生産と呼べるデニム生地工場は国内にはカイハラとこのクロキしかありません。
言い換えると他のデニム生地工場はどれか一つか二つの工程しかできないということです。縫製でも他の生地作りでも同様ですが、国内の工場は完全分業体制で成り立っているのです。洋服作りでも縫製する工場とボタンホールを開ける工場は別なのです。一方、中国の大手工場は洋服作りでも生地作りでも一貫生産がほとんどで、その分、国内の工場よりも使い勝手が良いのです。ですから、人件費の安さ以外でも国内のアパレルメーカーが中国工場を使うメリットはあったのです。これは現在、ASEAN諸国やインドで建設されている新造工場でも同じです。
さて、日本最大手のデニム生地工場であるカイハラの国内工場での生産量はどれほどでしょうか?
WWDの2017年11月17日の記事では「年間3600万メートル」( https://www.wwdjapan.com/1097 )と報道されており、多くても5000万メートルは越えないと考えられています。一方、中国やトルコの大手デニム生地工場各社は年間1億メートルを越える生産能力を有しています。カイハラは中国勢・トルコ勢の生産量の半分以下しかないのです。さらにいうなら、カイハラが1位で売上高は100億円を越えていますが、国内2位のクロキは20億~30億円の売上高で推移しており、規模でいえばカイハラの半分以下しかありません。1位と2位の差がこれほど開いているのです。
生産量ではすでに中国やトルコの工場に国内工場は太刀打ちできなくなっています。そして、これまで圧倒的に国内でも海外でも評価の高かった日本製デニム生地ですが、海外勢が技術力・影響力を高めており、安穏とはしていられない状況になっています。
例えば、代表はユニクロです。一般的にユニクロのジーンズにはカイハラのデニム生地が使われていることは広く知られていると思うのですが、実はカイハラだけのデニム生地を使っているのではありません。中国工場のデニム生地もトルコのデニム生地もずっと以前から使われているのです。その中でも存在感を増しているのがトルコの最大手デニム生地工場ISKO(イスコ)です。ユニクロがウルトラストレッチジーンズを発売してから数年が経過していますが、一番最初のウルトラストレッチジーンズに使われたのはISKOが製造したストレッチデニム生地でした。
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