商品が良ければ販売メンバーが同じでも売上高は増える

販売と商品はブランドや店舗の両輪で、どちらかが欠けても満足な売上高を作ることはできません。

この両方がかみ合ったときに満足な売上高を作ることができるのです。

日々店頭で立っていると商品が悪ければいくら販売員が丁寧に提案しても買ってもらえないということを痛感します。
例えば、月の3分の1くらいバッタ屋で販売を手伝っていますが、販売のメンバーは同じでも顧客の欲しがる商品があれば、売上高は1・5倍に伸びるのです。

例えば、今年1月は非常に売れ行きが苦戦しました。
防寒アウターの品ぞろえも薄く、セーター類も薄かったのです。

しかし、2月中旬にレディーススーツ類が入荷したところ、にわかに売上高が増えたのです。
高校の卒業式が2月下旬から3月上旬にあります。
そして3月半ばから下旬にかけて小中学校と大学の卒業式があります。

4月10日ごろまでにはすべての学校で入学式があります。

ですので、お子さんを持っている女性の多くはバレンタインデーが終わったあたりからスーツ類を探し始めます。
明確に欲しい商品がある人もいるでしょうし、安くて手ごろなスーツがあれば買いたいと思っている人もいます。

バッタ屋ですからスーツ類も安く販売しています。
だいたい2980~3980円です。

ですので、「安くて手ごろなスーツ」を探している女性は、サイズさえ合えば買っていくことになったのです。

その結果、3月は好調で、1月の売上高の1・5倍にも増えたのです。
また入学式が終わる4月10日ごろまでこの好調は続きました。

日本の会社では営業や販売が「気合を入れて売り上げを取りに行く」という精神論が重視されがちですが、お客が求める商品さえあれば、別段販売員が気合なんて入れなくても売上高は稼げるのです。

このバッタ屋は1月と3月で販売メンバーはまったく変わっていません。
メンバーが変わらなくても適品があれば売上高は稼げてしまうのです。

逆にどれほど顧客に親しまれていようと、好かれていようと、良い商品がなければ売れないのです。
販売員が親切だから欲しい物がないけど買ってあげるなんていうお客はいないのです。

アパレル企業の本部に取材に行くと、商品企画担当者やバイヤーが「店頭で売れないのが原因」なんて説明をすることがありますが、ほとんどの場合は「商品が悪いから売れない」のです。
店頭で売れない原因の多くは商品企画や仕入れが不味いからなのです。
販売員からすれば「お前らがもっと売れる商品を作ったり仕入れたりすれば売れるんじゃ!」というところです。

一日や二日ではなく、10日間くらい店頭で立ってみてください。
如実にそのことが体験できます。

商品企画担当者やバイヤーをときどき配置転換して2年くらい店頭販売させるべきだと思いますけど。

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】