百貨店向けアパレルはリスクをとって全滅を回避せよ

こんにちは。南です。

ぼくは販売員の経験があるといっても、トップ販売員でもないし、現在ではそれを主とした仕事をしていないので、製造とか店作りとかそちらの方から考えてみたいと思います。

百貨店へのテナント出店がメインだった国内の大手アパレルが苦戦しています。109系ブランドもかつての輝きはなく多くが苦戦しています。トップセラーの各メンバーはそれを販売員の視点から書いてくれていますが、供給側・消費者側から見た場合、売れなくなった原因は、低価格ブランドの商品と見た目がほとんど変わらなくなったからです。

98年にユニクロのフリースブームが到来しました。97年に北海道拓殖銀行と山一証券が倒産して、にわかに不景気感が強まったから1900円でフリースジャケットを売るというのは、社会的な風潮に合致していたんですね。そのあたりの嗅覚は柳井正という人は鋭いと思います。

で、単なる低価格衣料品ならその前からずっとありました。70年代からダイエーにもジャスコにもイズミヤにも並んでいましたが、ユニクロの売れ行きはそれらを圧倒しました。一つにはそれらに比べて宣伝広告が上手かったことがあるでしょう。ユニクロはフリースのテレビCMをアメリカの大手ブランドのCMを手掛けた人に依頼しましたが、ダイエーやジャスコが衣料品にクローズアップした本格的なテレビCMを流したことはほとんどありません。その時点で勝負あったわけです。

もう一つがユニクロの衣料品の方が生地や縫製の品質が高かったことです。少なくともダイエーやジャスコに納品していた量販店向けのアパレルの商品よりも。

蛇足ですが、現在のユニクロはOEM/ODMには頼らずに直接、協力工場と製造を進めていますが、古くは何社かの量販店アパレルにOEM/ODM生産を依頼していました。その中の何社かをぼくは知っています。中には倒産してしまった会社もあります。いずれまた別の機会に書くこともあると思います。

それはさておき。その当時、業界紙も一般的な大手メディアもユニクロの商品に対して「大手ブランドとほとんどそん色がない」と報道していました。現に、先輩だった業界紙記者もそう評価していましたが、ぼくはその評価に疑問を感じていました。

例えば、看板商品のフリースですが、明らかに有名ブランドの商品とは見た目が違いました。色・柄、シルエット、全部違いました。素材と縫製の品質はそれなりに高かったかもしれませんが、色・柄、シルエットが異なればそれは最早別の物です。だからぼくはユニクロのフリースをためしに1枚だけ買いましたが、気に入らないので近所のおばちゃんにプレゼントしました。

ジーンズも同じです。この当時のユニクロジーンズは2900円。カイハラの生地を使っているのは今と同じですが、デニムの色合いがリーバイスやエドウインとはまるっきり違いました。シルエットも違います。だからこの当時、ユニクロのジーンズを穿いている人は百発百中で見分けることができました。それほどにユニクロのジーンズはダサかったのです。素材と縫製はそれなりの品質ですが、洋服とは素材と縫製だけを買うものではありません。

ですから2004年までぼくはユニクロの商品を買っていません。色・柄、シルエット、デザインのすべてがダサすぎていくら安くても買う気になれなかったのです。

ぼくの「繊維産業ブログ」の読者なら驚かれるかもしれませんが、今はほとんどユニクロしか買っていません。が、ユニクロを買い始めたのは2004年か2005年のことです。

どうして買うようになったかというと、色・柄、シルエット、デザインが百貨店ブランドと見分けがつきにくくなってきたからです。そういうアイテムが増えてきたからです。これはユニクロ商品の見た目が向上したことと同時に百貨店アパレルの見た目が劣化してきたからです。

同じような商品しかないなら人間は安いほうで買います。しかも生地と縫製に関しては以前からユニクロは一定の水準にあったのです。じゃあ、百貨店ブランドに固執する理由がありません。

そこから10年が経過して、その傾向はますます強まっています。百貨店ブランドの見た目はますます劣化しているし、生地や縫製までが粗雑になっています。一方、ユニクロの見た目はそれなりに向上し続けています。これでは百貨店ブランドが売れなくなるのは当然ではないでしょうか。

今回はちょっと長くなりますが、もう少しお付き合いください。

じゃあ、百貨店ブランドが復活するためにはどうしたらよいのかというと、商品作りを再度強化する必要があります。低価格ブランドとは見た目から違うという商品をもう一度作る必要があります。販売員の個々の販売力だけでは売上高を稼ぐのにも限界があります。陳腐な商品はいくら販売員ががんばっても簡単には売れません。

価格競争に巻き込まれないためには、「商品の独自化」を実現させる必要があります。そしてその「商品の独自化」を実現するためには合議制でなく、一人ないし少数の人間のセンスを全面に取り入れる必要があります。合議制で全員が納得する商品こそ、特徴がなくて誰もほしいと思わない商品になりがちです。特徴がないから誰も文句がないのです。

そういう個人ないし少数の人間がセンスだけに基づいて提案すれば、ややもすると博打みたいになります。そうならないためにマーケティング的なデータで裏付けをとります。

そしてそれらを一括で運用するために、個人ないし少数集団に権限を与えます。

商品の独自化

個人・少数による提案

データマーケティング

権限の付与

この4つがそろって初めて「提案できる商品づくり」ができます。ぼくが勝手に言っているのではなく、某大手企画会社の社長の持論です。

もちろんこのやり方にもリスクはあります。しかし、世の中ゼロリスクは存在しません。従来のやり方に固執し続けたり、ユニクロの後追いを続けていれば、遠からず百貨店アパレルはほぼ全滅するでしょう。ゼロリスクを選んで全滅するのか、リスクをとってでも何社かが生き残るのか。百貨店も百貨店アパレルもその覚悟を決めなくてはならない時が訪れています。

 

スポンサーリンク

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

スポンサーリンク
南 充浩
About 南 充浩 51 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿

Be the first to comment

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*


CAPTCHA