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日経ビジネス「誰がアパレルを殺すのか」という衝撃的な特集の一つで上記のような記事がございました。
内容は、日本の生地を製造している工場が海外ブランドと国内ブランドのアパレルビジネスへの取り組みの違いを語ったものです。下記、一部抜粋します。
「海外ブランドはデザイナーの方と直接お話ししているんです。日本では誰と話をすればいいのか、どういう経過を経てうちの生地が使われるのかも分からない。昔は日本のデザイナーの方もよくこちらに来て、我々の知らないことを教えてもらったりしたもんです。それで我々も勉強しました。最近になってようやく、日本のアパレルの方が福井まで来てくれることも増えてきました。素材から差別化しないとダメだ、と分かってくれたんじゃないでしょうか」
(中略)
「社員にはいつも、『五輪種目のような商品は日本に残らない』と言っています。つまり、どこまでも機能性を競っていくような商品ですね。個人的には、『生地中の糸の密度が100本から101本になった』なんて、それを優位性だと言うこと自体が愚かしいと思います。機能性を打ち出していくような商品は、生産のレスポンスから価格まで含めて、日本に残る道理はないでしょう。ユニクロが5年後、日本で何かを作っていると思いますか?100%それはないと思いますよ」
「今後も残るのは、感性の商品だと考えています。この世界は、繊維に長く携わってきた日本人らしい感性が要ります。中国やアジア諸国が追い付いてくるのに何十年もかかるでしょう。言うなれば『ハイテク高機能』ではなく、『ローテク高感性』です」
重要なキーワードは、「海外ブランドはデザイナーが直接生地を選びにくる」「機能性で競ってもダメ」「今後は感性軸でなければならない」といったところでしょうか。
有名なお話ですが、海外、特にラグジュアリーブランドはサプライチェーンマネジメントの設計がしっかりなされています。お題にもあるルイヴィトンは職人の育成にまで自前でやってますが、日本でそこまで取り組んでいるブランドはほとんどありません。「職人のハンドメイド」「クラフトマンシップ」というものを顧客が望み、ブランドのストーリーの一つを構成する事をラグジュアリーは知っているのです。
国内ブランドの動きを見ていていつも不思議に思うのは、日本製を謳う割にサプライチェーンに対して無頓着ではないかという事。そしてバカの一つ覚えのように「日本製」のみを打ち出す。そこにはブランドのストーリーなど存在しません。日本製推しだけでブランディングできると思ったら大間違いです。
以前読みました「鎌倉シャツ 魂のものづくり」には、
宇惠シャツ(大阪府大阪市)は四年前までは、バーバリー、コムデギャルソンなどの高級ブランドを手がけていたが、現在は鎌倉シャツのみに絞り、月四000枚から五000枚を生産している。
そして高級ブランドの生産を辞めた理由としては、
以前、宇惠シャツの他社との取引は、発注が五000枚あったかと思えば、いきなり二000枚になるなど安定しなかった。
と記載されています。これが国内の状況。せめて日本製推しをするブランドならブランド主導で工場を買い取るか、密に連携を取って安定的に仕事を依頼できるような取り組みが必要ではないでしょうか。まあサプライチェーンにストーリーを求める必要も無いのかもしれませんが、それでは国内工場は衰退の一途をたどるでしょう。
そしてただ単に日本製を推すのではなく、顧客に刺さるストーリーを設定し、その文脈の中で「日本製」を押し出していってほしいものです。
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