ゾゾ前澤社長が語る「ZOZOARIGATO」の真相と新戦略㊤
現在業界のEC比率は約10~20%程度と想定しますが、これが30~40%程度になれば、過剰在庫が減り、セール過多問題の解消も進むはずです。これまでECは店の脇役でしたが、「EC主体のモデルこそアパレル業界に必要なこと」と堂々と主張していくべきタイミングを迎えたと思っています。
ZOZOTOWNの前澤社長が久しぶりにメディアに出てきましたね。そして「EC比率が30〜40%程度になれば過剰在庫が減る」という部分に、業界人の多くが既に突っ込みを入れていますが、EC事業者の一人として思う事を記載しておきたいと思います。
○ECは消化率が高くない
これ、至る所で何度も書いていますがECは消化率が決して高くないです。プロパー品においては特にですね。ECの特性上、SKU数は増やした方が売上は最大化されます。ECモールでよく使われるいわゆる「ロングテール」ですね。
ロングテールとは…販売機会の少ない商品でもアイテム数を幅広く取り揃えること、または対象となる顧客の総数を増やすことで、総体としての売上げを大きくするものである。(ウィキペディアより)
おわかりの方も多いかとは思いますが、これって売上を大きくするものであり、「在庫を削減する」ものではありません。では大手アパレルは余った在庫をどうやって削減しているのかと言いますと、大まかには下記になるでしょう。
・ECでの期中値下げ
・店頭セール
・シーズン後のアウトレット店舗への投入
と、まあ基本は値下げですね。最終利益が増えるならこの戦略でもいいとは思いますが、EC比率が伸びれば過剰在庫が減るロジックがよくわかりません。むしろ、単純にECの比重伸ばせば在庫は増えます。ではどうすれば消化率の低いECを改善にもっていけるのでしょうか。
○やる事は店頭とそれほど変わらない
消化率の改善はECのみで改善しないというのが持論です。重要なのは下記項目でしょうか。
・MD設計の精度向上
・製品の付加価値を高める販促計画やコンテンツマーケティイング
・店頭在庫連携
ECらしい施策と言えば「店頭在庫連携」くらいでしょうか。多くの大手アパレルではもう既に導入していますね。でもこれって店頭のみで運営していた頃の「客注対応」や「店間移動」をより効率的にしたものです。機会損失防げるからもちろん在庫の効率は上がります。
「販促計画」「コンテンツマーケティング」は全てがMD設計と連動していなければなりませんが、これ書きだすとめっちゃ長くなるのでまた違う機会にお伝えしたいと思います。
結局何が言いたいかと言いますと、EC単体で考えるからおかしな話になるのです。やらなければならない事は、実は店頭のみで運営していた頃と本質的に変わりませんし、こんな時代だからこそチャネルごとの特性を駆使してセットで考える必要があるのです。とは言え、ECは今後も伸び代のある事業なのは間違いありません。この記事のおかげで、EC担当者は売上と粗利だけを追うのではなく、この「在庫問題」について考えるいいきっかけにはなったのかもしれませんね。