ゾゾタウンを運営するスタートトゥデイの中期経営計画が発表されましたが、到底実現不可能な数字しか並んでいません。
投資家はこれで納得できるのでしょうか?不思議でなりません。
とくに疑問を感じるのは自社企画ブランド(PB)の「ゾゾ」の販売計画です。
初年度200億円、3年後2000億円という数字がブチ上げられています。
3年後2000億円もさることながら、初年度200億円という数字も到底実現は難しいと言わねばなりません。
現在、今年度が2か月ほど過ぎた時点で、PB「ゾゾ」の商品は1200円のTシャツと3800円のジーンズしかありません。
ゾゾ側はオーダースーツ、ワイシャツ、ワンピースなどの新規商品を投入することを発表しましたが、現時点ではその商品はいまだに投入されていません。
トップセラーの深地雅也さんが、
仮にTシャツが100万枚・ジーンズが100万枚売れたとしたって12億円と38億円にしかなりません。
と指摘されていましたが、まさにその通りで、これだと売上高は50億円にしかなりません。
さらにいうなら、100万枚も服を売るということはとてつもなく難しく、PB「ゾゾ」はせいぜい売れてもTシャツ10万枚・ジーンズ10万枚くらいが最大値でしょう。
当方は10万枚ですら多めに見積もっていると思いますが。
ゾゾ応援団みたいなIT界隈の騒ぎ屋だとかメディア・スタートアップ界隈の騒ぎ屋は洋服のド素人なのでピンと来ていないのかもしれませんが、100万枚売るということはとてつもなく大変な量を売ることで、そう簡単にできることではありません。
しまむらが、好決算をたたき出したときの原動力が「裏地あったかパンツ」の大ヒットでこれは100万本を売ったと発表されています。また、3年前のジーユーが大躍進したきっかけはガウチョパンツが100万本売れたことにあります。
5600億円企業のしまむらの業績を左右するほどの量が100万本なのです。
そして、10万本ですら衣料品業界では大ヒットと呼ばれ、ディマンドワークスの齋藤孝浩さんの著書によれば、「同じ服を他人が着ている『かぶり』現象が起き始めるのが10万枚販売されたとき」と書かれており、同じ服を着た人を見かけるようになるくらいの状況になるのです。
その観点からいえば、ゾゾのTシャツとジーンズがそこまで売れるとは考えにくく、当方は最大でも5万枚ずつ売れれば上出来ではないかと思っています。
そして売上高200億円というのは、オンワード樫山のビッグブランド「組曲」「23区」と同等なのです。
たった1年の新ブランドが簡単に稼げる額ではありません。
さらに3年後の売上高2000億円というのはもっと荒唐無稽です。
2000億円というと今のジーユーと同じ売上高になります。
2010年にトレンドブランドへ方向転換してからジーユーが2000億円になるまで7年間もかかりました。
それをたった3年で実現できるとは考えられません。
また、今のアダストリアホールディングスの年商が2000億円強です。
今回の中期経営計画は単なる株価対策のビッグマウスではないかと見ています。
ゾゾが海外、とくにアメリカ市場に進出を考えているから2000億円も達成可能だとゾゾ親衛隊は説明しますが、果たしてそうでしょうか?
アメリカにはすでにネット通販大手があります。とくにAmazonが本社を置き、猛威を振るっています。
巨人Amazonに、日本から来たポッと出のゾゾタウンが太刀打ちできるとはまったく思いません。
これは逆を考えてみればわかるのではないでしょうか。
中国や韓国、アメリカのネット通販がいきなり日本に進出したところで、先行者である楽天やYahoo!ショッピング、ゾゾ、Amazonジャパンには太刀打ちできません。
日本人だってそんなポッと出の外国のネット通販よりも慣れ親しんだそれらを優先的に使います。
アメリカだって同じことです。
今後も株価対策のためにスタートトゥデイはこういうビッグマウスを連発すると思いますが、果たしてどうなることやら。