マス層は業界人が想像しているより洋服の知識を持っていない

バッタ屋の店頭に立つのもそろそろ疲れてきたので、圧倒的に日数を減らして欲しいと願ってやまないのですが、逆に2月はなぜか増えている始末です。苦笑

で、バッタ屋の店頭に立っていると新たな発見もあります。

バッタ屋と呼ばれる不良在庫品処分店に来るお客は、恐らくはレイトマジョリティーと呼ばれるマス層だと思われるのですが、トップセラーを目指す皆さんは恐らくはそれなりに洋服の知識をお持ちだと思います。

もちろん、それなりどころではない知識を持っておられる方も多いと思います。

 

当方もそれなり程度には洋服の知識を持っているつもりです。

例えば、あまりに基本的なことですが、洋服のサイズ表記はよほど特殊な場合を除いてだいたいの意味を理解しています。

しかし、バッタ屋に来る40代~70代のレイトマジョリティー層の女性は洋服のサイズ表記の意味を知らない人が珍しくありません。

いつも

「この人は一体どうやって何十年間も服を買ってきたのだろう?」

と不思議でなりませんが、恐らくはサイズ表記を見ずに試着して合った物を買うということを繰り返してきたのでしょう。それ以外に説明ができません。

こんな質問をされたことがあります。

 

「Mサイズってどんなサイズ?」

 

これにはなんと答えてよいのかわかりません。

また、こんな人もいました。

ズボンを試着したのですが、小さいからもっと大きいサイズを持ってきてほしいとのことでした。そこで

「今、試着したのは何サイズでしたか?」と尋ねると

「わからへんねん」という驚愕の答えが返ってきました。

どうやらこの人はサイズを見ずにズボンを掴んで試着室に入ったようです。

 

そんなアホな、と思いながらも気を取り直して

「では今日ここに来るまでに穿いてきたズボンのサイズを教えてください」

と尋ねなおすと、それに対しても

「それもわからへんねや~」という大木こだま師匠ばりの答えが返ってきました。

 

何とかして穿いてきたズボンのサイズを確認するとユニクロのウエスト69センチくらいのズボンでした。

ちなみに最初に掴んで試着したズボンは61センチくらいのウエストでしたから入るはずがありません。

ようやく、69センチ前後のズボンを探して試着してもらい、そのまま買ってもらいましたが、サイズ表記を一切見ないために優に30分以上を費やしました。

サイズをきちんとこの60歳前後の女性客が把握していれば10分で済んだのですが。(笑)

しかし、これがレイトマジョリティーと呼ばれるマス層の実態です。

ファッショナブルな人に向けた小中規模のブランドならこの手の人を相手にする必要はまったくありませんが、1000億円とか2000億円の売り上げ規模を維持したいブランドなら、この手の人も少なからず取り込む必要があります。

この手の人を大量に取り込んでいるのがユニクロです。

各社がユニクロを目指す必要はありませんが、ある程度のマス層を目指すのであれば、彼らは洋服に関する知識はほとんど持っていないと考えて取り組む必要があります。

ちなみにこの手のお客に当方は少なからずイラっとします。(笑)

 

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南 充浩
About 南 充浩 163 Articles
1970年生まれ。大学卒業後、量販店系衣料品販売チェーン店に入社、97年に繊維業界新聞記者となる。2003年退職後、Tシャツアパレルメーカーの広報、雑誌編集、大型展示会主催会社の営業、ファッション専門学校の広報を経て独立。現在、フリーランスの繊維業界ライター、広報アドバイザーなどを務める。 2010年秋から開始した「繊維業界ブログ」は現在、月間15万PVを集めるまでに読者数が増えた。2010年12月から産地生地販売会「テキスタイル・マルシェ」主催事務局。 日経ビジネスオンライン、東洋経済別冊、週刊エコノミスト、WWD、Senken-h(繊研新聞アッシュ)、モノ批評雑誌月刊monoqlo、などに寄稿 【オフィシヤルブログ( http://minamimitsuhiro.info/ )】