この時期になると自分の教えている学生さんから、
「内定が出ました!」
という連絡がちらほら来るようになります。3月から企業が就活サイト上でエントリーを開始し、説明会と数回の面接を経ると、早い学生さんなら大体この時期くらいから内定をもらえます。自分の教え子が希望の企業で内定をもらえる事は喜ばしい事ですし、わざわざ報告してくれるのも大変ありがたい事なので、講師をやってて良かったと心から思える瞬間ですね。
「早い時期に決まって良かったね」
と返していると、
「先生、これでクラスのメンバーはほぼ全員進路決まりました。」
と驚きの返答が。我々が就活をしていた十数年前では最短で決まってもこの時期なのに、我がクラスはもう全員が希望の進路を確定させていたのです。
○どんどん早くなる就職活動のスタート
もちろん、僕の教えているクラスの子達が優秀という事も言えると思います。しかし、それを差し引いても、就職活動において企業が学生さんにアクションを起こす時期が年々早まっているように思うのです。先述した通り、企業の情報解禁は3月だと決まっていますが、それに先駆けて前年の年末くらいから大手アパレルでは単発でインターンを実施しています。インターンに参加すれば企業は個人情報を取得できますし、目ぼしい学生さんがいたらすぐプッシュする事が可能です。情報解禁の前から自社への面接参加を促しておき、3月に入った途端に内々定を出せるようにしているのです。
また、自社でアルバイト採用している学生さんも狙い目です。店長から事前に見込みのある学生さんを聞いているのか、こちらも早い段階から就職へのプッシュと、時には「推薦書」というものを用意しておき、それを提出すると高確率で内定が出る仕組みを作っています。推薦書を提出すると、他社の面接を受ける事ができなくなる、いわゆる「専願」なのですが、そういった取り組みをする事で学生さんを囲い込み早めの人材獲得に努めています。
こういった動きは大手ほど顕著に見られます。放っておいても3月になったら人気企業へはたくさんエントリーが来そうなものですが、売り手市場とは言え、やはり販売員の慢性的な人手不足とできる限り優秀な人材を獲得したいという思いから、こういった動きを取っているのでしょう。
○この状況で教育機関が出来る事は?
ファッション専門学校でよくあるのが、就職が決まると学生さんの出席率が大幅に下がってしまうという事です。
学校の役割=就職を決める為のもの
という捉え方をしている若者が多く(それは間違いでも無いのですが)本来であれば就職後に使える技術・知識の習得が最優先事項なのを見誤りがちです。しかし、皮肉なもので就職が決まった学生さんは目の前に大きな課題が出来てしまい、それを解決してくれる事を教えてくれないと学校へ行く意味を見失ってしまいます。その課題とは、募集人員からもわかるように多くのケースで「販売現場で対応できる力」になります。
何度も自校のお話をして恐縮ですが、当校はトプセラメンバーが4人も講師をしているちょっと珍しい事例ですので、学生が「販売」において課題を見つけてくれたら逆にありがたいのです。それを学校側で解決してあげる事こそ、最も効率的な学習法と言えます。しかし、多くの教育機関では販売員教育を軽視しているからか、対応する事が出来ないでしょう。
こういった状況を加味しますと、企業はもう自前で教育したらいいのでは?と思うのです。専門学校に入学して半年程度の学生さんにインターンでアプローチするのであれば、もう高卒の段階で現場で勤務させると同時に、並行しながら教育を実施する。どんどん早くなる就職活動を目の当たりにするとどうしてもそんな気持ちになってきます。教育機関で教えている側の人間が言う事ではありませんが、早期の学生さんの課題創出とそれに対する解決は、早めに現場を経験させてあげる事につきます。現場を持っている企業だからこそ、そういった事が可能になる。本当に若者にとって何がいいのかを考えると、最終的にはそこに行き着くのではないでしょうか。